株高と“米中新冷戦”

木下 長年、アメリカのユーフォリアに乗れなかった日本が、なぜ今回は、上手く波に乗ることができたのでしょうか。

河野 大きな要因の一つは“米中新冷戦”が始まったことでしょう。それによって世界的にサプライチェーンが組み直され、台湾の半導体メーカーであるTSMCをはじめ、続々と日本に生産拠点が移されるのではないか。日本の製造業が復調すると楽観視されているわけです。

 TSMCは先端半導体をつくる世界最大のメーカーで、アメリカのアリゾナと日本の熊本に製造拠点を移そうとしている。これは大きなプラスとなりそうですね。いまやアメリカ、中国だけでなく、世界中が半導体製造能力の向上に必死で努めていますから。

河野 もう一つの要因が円安です。円安が進むことで、日本の株や不動産など、リスク資産の価値が外国人にとってかなり割安となり、投資を呼び込んでいる。また、輸出や海外拠点で稼いでいる日本企業の業績が、円安で大きくかさ上げされている。それらが相俟って、株価を押し上げています。

木下 外国人投資家の日本株高への寄与はますます高まっています。7月に発表された株式分布状況調査によると、2023年度の金額ベースで見た外国人の日本株の保有比率は31.8%と過去最高になりました。特にチャイナマネーが日本株に流れていると言われています。

 中国の政府系ファンド「中国投資」が日本企業を狙っているという報道もありました。個人・機関投資家を問わず、中国人のETF(上場投資信託)投資は過熱しています。その要因の一つは、河野さんがおっしゃったように、日本のファンダメンタルズ(経済状況)が“米中新冷戦”と円安の追い風を受けて好調であることでしょう。

もう一つの大きな要因は中国経済の減速です。中国のミドルクラス以上の富裕層は、いま中国国内で資産を運用するのはリスクが高いと考えている。そんな時、世界中を見渡して、運用先として選ばれているのが日本なのです。その最大の理由は、やっぱり円安でしょうね。

円安が日本の株価を押し上げていることは間違いないですから、円高になると株価が下がる可能性が高い。その点でドル安を掲げるドナルド・トランプ氏の再登板には要注意ですね。株に投資する人は、為替の動向にも気を配っておくべきです。

河野 5月頭の為替介入の際にも、円が急に4円ほど上昇した影響で、日経平均株価は一気に500円ほど反落しました。

 ただ、日本の株式市場は全体のトレンドとしては堅実に上昇しており、楽観的に見て良いと思います。

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