婚前交渉についての日本人の意識調査

ある調査を紹介しましょう。

NHK放送文化研究所が1973年から5年ごとに日本人の意識について継続的に調査をしています(16歳以上)。サンプリング、分析、集計方法がきちんとしているので、多くの社会学者が参照している調査です。その中の「『日本人の意識』調査」に、婚前交渉の是非に関する項目があります。

同調査では、結婚前の男女の性関係(「性的まじわり」という言葉が使われていますが)について、次のような選択肢が用意されています。長いので要約すると、①結婚までは不可、②婚約していれば可、③深く愛し合っていれば可、④性関係に結婚や愛は関係ない、といった4つです。

1973年は、それぞれ、①58%、②15%、③19%、④3%(不詳4%)。直近で公開されている2018年のデータでは、①17%、②23%、③47%、④7%(不詳7%)となっています。

すなわち45年の経過で、婚前交渉を「不可」とする人は約6割から2割にまで減り、逆に、愛し合っていれば「可」とする人は半数に届こうとしているわけです。

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婚前交渉に寛容になっていく社会変化

さらに興味深いのが、婚前交渉について男女別に行った意識調査です(NHK放送文化研究所『現代日本人の意識構造[第九版]』〈婚前交渉について〉33~35頁より)。

そこに示されている1973~2018年までの結果を読み解くと、以下のとおりです。

●1973年の段階では、男女とも過半数の人が「婚前交渉はダメ」だと思っていた。特に女性は、3分の2に及ぶ人がそう思っていたが、それ以降減少していく。
●婚前交渉は「婚約で可」という人は、各年代2割程度でそれほど変わらない。
●婚前交渉は「無条件で可」という人は、今でもそれほど多くない。男女とも1割以下である。
●婚前交渉は「愛情があればかまわない」という人は男女ともに増えて、90年代後半から最もメジャーな意見になっている。

ここで重要なのは、世代別の分析が載っていることです。時代が昭和から平成に変わっても、それぞれの人の若い時分の考え方がさほど変わらないことが強調されています。

つまり、1973年時点で多くの年配者は婚前交渉に反対だが、若い人が寛容な意見を持ち始め、その人々が年をとっても寛容なままでいつづけることで、社会全体が寛容になっていった、ということです。