株価の上昇は円安によってもたらされていたと見える

例えば、日経平均株価を金の国内小売価格で割った「金建て」の株価を算出し、岸田首相が就任した2021年10月4日を100として指数化してみよう。日経平均株価(円建て)はピークの今年7月11日には148.4まで大幅に上昇しているが、7月11日の金建て指数は76.1と逆に下落している。

金というのは古来、価値を保存するための通貨で、金価格が上昇するということは通貨価値が下落していることを示す。金の小売価格は1グラム=1万3000円を超え、大幅に上昇しているが、これは円の価値が下落していることを表している。つまり、日経平均株価(円建て)が上昇して「みえた」のは円の価値が劣化しているからで、株価の上昇は円安によってもたらされていたと見ることができるわけだ。

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では今回の日経平均の大暴落はどうか。

市場は日銀の「本気度」を試しにいった

円建ての日経平均株価は2日で6667円下落するなど大暴落したため、指数は7月31日の137.5から8月5日には110.6まで下落した。一方、金建て日経平均株価の指数は73.2から61.4に下落したが、円安分が剥げたことで、円建て日経平均株価の下落が「増幅」されていたことが分かる。金建て日経平均株価の指数は8月15日時点で70.8まで戻っていて、ほぼ株価の実態価値は暴落前に戻っている。

岸田内閣の経済政策は、意図的に「円安」に誘導することで、物価を上昇させ、デフレから脱却することを狙っていたとみられる。物価が上昇すれば、税収も増えて財政悪化も一時的に改善し、内部留保を持つ企業も、金融資産で持つよりも投資に動く。見た目の業績が良くなれば賃金も上がる、と考えていたのだろう。結果的に、円安(円の劣化)によって円建ての資産価格は上昇し、不動産価格や株価が実態以上に上昇することとなった。

日銀の利上げが本気だとすれば、この「円安株高」の流れが逆流し始めることになる。市場はそんな日銀の「本気度」を試しにいったと見ていい。すべてが逆回転を始めるのならば、円安に支えられていた株価は大暴落する。それでも日銀は利上げを一段と進めるのか。