「口先介入」を繰り返した政府と日銀

その後、政府も日銀も、円安を阻止するための「口先介入」を繰り返す。政府は6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2024(骨太の方針2024)」で、プライマリーバランスの2025年度黒字化という目標を復活させて明記した。財政赤字の拡大を予想した円安進行を止めることを狙っているのは明らかだったが、本当に黒字化できるかどうかは未知数だった。また、日銀も国債購入額の減額を打ち出してはいたものの、その規模は明示しておらず、「口先」の領域を出ていなかった。

為替はジリジリと円安に動き、6月末には再び1ドル=160円台を突破、7月3日には一時、1ドル=161円90銭を付けた。もはや円安阻止には、市場が予想していない利上げに踏み切るしかない、というのが「サプライズ」の動機だったのではないか。

植田総裁は利上げを決めた決定会合の後の記者会見でこんなことを述べていた。

「データを見ると、消費者物価総合ないし、除く生鮮が2%を超えている期間も既に2年をかなり大幅に超えているということで、長期化している高いインフレ率が人々に負担を強いていることは、申し訳なく思っている」

サプライズによって何とか円安を止め、輸入物価の上昇による消費者物価への悪影響を止める、そんな決意が滲んでいる。

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ブラックマンデー時を上回る過去最大の下げを記録

ところが、このサプライズが市場の反発を食らう。

株価が大暴落を演じたのだ。2日後の8月2日の日経平均株価は2216円安、週末を挟んだ8月5日は4451円安とブラックマンデー時を上回る過去最大の下げを記録した。ほとんどの銘柄が売一色でなかなか値段が付かない異常事態となった。

もともと今の株高は円安によって支えられてきた。企業収益の改善などが理由として語られるが、その企業収益も米国子会社の収益を円換算すると円安で円建て決算が大きく膨らむという為替効果も含まれている。国内小売業の売上高も物価上昇で水脹れしている。必ずしも株価上昇が、実体経済の改善を映しているだけではないのだ。