「幼い孫がいれば当然、孫の顔は見たい。でも彼らの“じぃじ”や“ばぁば”に当たるのは、主にいま60代の『新人類(バブル世代の一部)』と、その上の『シラケ世代』です。

シラケ世代(現在の66~72歳)は、芸能人でいうと郷ひろみさんや明石家さんまさん、所ジョージさんらに代表される人たちです。青春時代から欧米文化の影響を受けて独立心が強く、『嫁が~』『お墓が~』という、いわゆる家族制度へのこだわりが弱い。“個”としての自分を大事にするがゆえに、夏の暑いなか、面倒なことに煩わされて自分の時間を犠牲にしたくないと考えやすい世代でもあります。

そんな祖父母のなかには、自分の子どもやその“嫁”にヘタに来られても、『わざわざ自宅を掃除したり、あれこれ準備したりするのが大変』とぼやく方々も。『帰省して来るにしても、本音では外のホテルに泊まってほしい』と洩らすシニアも少なくありません」

迎える側も変化している

また、「帰省ブルー」や「帰省スルー」とモヤモヤする以前に、「お盆に帰省」という概念そのものが、これからなくなっていく可能性もあるという。

「帰省先の祖父母自身が、昔とは違い、まだ働いている『現役世代』でもあります。お盆は自分たちにとっても貴重な休暇で、そこに友人とのお出かけなどの予定を入れているケースも多いもの。

また、今後の年金不安などもあるなかで、お盆の時期はなにかと料金が高い。それなら、“じぃじ”“ばぁば”の誕生日など記念日や、お盆期間以外の(旅費などが)安い時期に会うほうが『コスパ』がいい、と考える時代になりました。

そもそも、お盆に帰省する理由の一つはお墓参りでしたが、いまは60~70代から先祖の“墓じまい”などを早めに始める方も増えています。またコロナ禍で、離れていても孫や子と会話できる『リモート対話』を習得したシニアも多い。今後、夏休みの帰省は、確実に減っていくでしょう」

夏に帰省をする必要性が薄れていくことを喜ぶ人も多そうだが、一方で帰省は孫世代にとって「いい面」もあると牛窪さんは話す。

「Z世代(主に現在の20代)は『社会貢献欲求』が強い世代だと言われ、彼らにインタビューすると、『帰省した際、地方は人口が減っていて大変だと気づきました』との声をよく聞きます。その気づきから、『地方(地域)をなんとかしなきゃ』と地域貢献の活動をするようになったり、地方再生のNPOに参加したりと、動くケースもある。

都会に住むお孫さん世代が帰省して、地方に『第二の故郷』を持つことは、長い目で見ると大きな意味を持つ場合もあるのです」

(AERA dot.編集部・太田裕子)

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