「国が全額負担する」と大見得を切っていた

データ連携の仕組みを最初に構築することはシステム開発の基本中の基本です。逆にこれが決まらないと、後から何のデータを異なるシステムにどう連携させるか仕様がコロコロ変わるたびに開発作業に手戻りが発生し、状況によってはプロジェクトが大炎上して開発において大変なコスト増になります。

小規模な自治体ではこれらのシステム開発を自治体職員が設計して自前でNECや富士通系など開発ベンダーに発注するコスト負担が重く、場合によっては単独で開発不能なところも出てきかねません。そういう自治体に対して総務省など政府筋が自治体に開発費を補助・補填する話も予算化しようとしたところ、突然河野太郎さんが横から出てきてこれらの標準化にかかる費用は国が全額負担すると大見得を切ったのです。

その自治体の負担するコストこそ、自治体では決め切ることのできないデータ標準化に関して発生するコストと時間です。この標準化の決定に関しては業者や省庁間でもさまざまな意見があるところ、デジタル庁が大ナタを振るい、各業者の間で進め方が議論になって揉める標準化を決めてくれるものだと思われていたのです。

デジタル庁が入居する「東京ガーデンテラス紀尾井町」(写真=Akonnchiroll/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

「バラバラのシステム」ではデータ連携が困難に

この大事なデータ標準化の策定作業をデジタル庁が決め切れず、あろうことか自治体にぶん投げ直し、各事業者間で協議し、その調整は自治体がやりなさいと丸投げしたことで、大変なことになってしまいました。どうしてこうなったのか分かりませんが、2025年度末までの基幹業務システムの標準化という目標が未達になってしまいます。

システムの基本設計で必要なデータの持ち方が決まらないわけですから、単にシステムの開発が間に合わないよということではなく、開発期間が延びます。またその分だけ開発コストがかかります。

自治体からすると、大風呂敷広げて国がデータ標準化にかかる費用は面倒を見るといっても、ここでデジタル庁が「データ標準化に関してデジタル庁は着地させることができなかったので、各自治体が業者間協議を行い策定してください」というのは当然コスト面でも問題があります。さらに、再び各自治体がバラバラに事業者間協議を行って異なるデータ標準を策定してしまうと、今度は自治体・省庁間で相互にデータ連携がしづらいバラバラのシステムができてしまいます。こうなってしまうとガバメントクラウドどころではないのです。

さすがにマズいだろうということで、その直後に行われた8月2日の河野太郎さんのデジタル大臣としての記者会見で話される中身に注目が集まったのですが……どうも、河野太郎さんは問題を分かっていなかったご様子。