平均的な顔立ちよりも「特徴の誇張された顔立ち」

女性の特徴の平均性について語る場合、はっきりさせるべき点が1つある。平均した顔は非常に魅力的だが、際立って魅力的というほどではないのだ。平均した顔はしばしば美人コンテストでは優勝できるが、たいていのファッション雑誌の表紙を飾るスーパーモデルの顔とは違う。

心理学者のデイヴィッド・ペレットは、集団全体を合成した女性よりも集団内で上位の容姿をもつ女性たちを合成した女性のほうが魅力的であることを示している。スーパーモデル級の魅力的な女性は、平均的な顔立ちではなく特徴の誇張された顔立ちをしている。平均よりも眼は大きく、顎は細く、口から顎先までの距離が短い。これらは女性の顔を男性の顔から区別する特徴を誇張したものだ。スーパーモデルの顔はしばしば少女に典型的な顔立ちで、ときには10歳にも満たない少女のような顔立ちの場合もある。

異性愛者の女性が男性のどこに魅力を覚えるかとなると、話はさらにややこしい。どの文化でも、魅力を覚える要素を挙げてもらうと、女性は男性ほど身体的な魅力を重視しない。男性ほど視覚的な要素に動かされないのだ。

計算論的神経科学者のオギ・オーガスとサイ・ガダムは愉快な著書『性欲の科学』(坂東智子訳、阪急コミュニケーションズ)において、大量のエビデンスを集めてこの点を明らかにしている。2人の利用するデータは、「何よりも大事で私的な行動の1つである“性的欲求”を再検証するための世界最大の行動実験」で集めたものだ。インターネット検索を分析し、ウェブ上で男性と女性がどんなことを検索しているのかを調べた。仮想世界での欲望については、驚くほど明確な性差が見られる。

「権力は究極の媚薬だ」

男性は圧倒的にポルノを検索する。動画は視覚的に生々しいが、プロットや感情を喚起する要素はあまり含まれない。対照的に、女性は圧倒的にEロマンスサイトを検索する。Eロマンスサイトとは、ヒーローの男性を中心に展開するロマンスの物語を紹介するサイトだ。男性に対する女性の欲望は、容姿以外にもさまざまなシグナルから形成される。女性は男性よりも地位、権力、富、守り与える力を重要視する。ヘンリー・キッシンジャーは、外見的な美しさで知られる男性ではなかったが、しばしば若く非常に魅力的な女性を連れていた。「権力は究極の媚薬だ」というのが彼の言い分だった。

ヘンリー・キッシンジャー(写真=David Hume Kennerly/Gerald R. Ford Presidential Library and Museum/CC-PD-Mark/Wikimedia Commons

どんな人に魅力を覚えるかという点で、女性は男性より複雑だが、それでも男性のもつ特定の形態的特徴に反応する。テストステロンは、大きく角張った顎、こけた頬、濃い眉をもたらす。女性は一般にこれらを備えた「男性的」な顔を好み、この嗜好は文化を問わず広く見られる。僻地の森林で暮らすクン・サン族でも、がっしりした顎や強靭な体に恵まれた男性のほうが多数の性的パートナーをもつ。