「今日もうまくいかなかった」のくり返し

――周囲と衝突することもあった、と過去のインタビューにはあります。

瀧内 いま思えばですけど、社会へのいら立ちだったんでしょうね。映画作りは集団作業ですけど、集団にうまく馴染めないところがあって、大人たちに反発していた。無知な自分へのいら立ちもあったんだと思います。反発するくせに技術は未熟だから、求めに応えられない歯がゆさがあって。

自分のやっている仕事には価値がないとずっと思いつづけていました。プロって、お金をもらうわけですよね。でも大人数に囲まれているから、現場の反応でわかるんです。これではお金をもらえないなって。「今日はうまくいかなかった」「今日もうまくいかなかった」のくり返しで、このまま続けていっても駄目だなと思っていました。

――それで富山に帰ろうかと悩んだりして。

瀧内 呼吸がしづらくなる感覚があったんですよね。だから一時期は実家に帰りたいと思ったこともありました。

「自分はもっとできる、もっといける」と

――そのころいちばんつらかったのはどんなことですか?

瀧内 仕事がないことがつらかったです。オーディションに行っても、そのたびに落ちていたので。私は自分の肉体を通じて、実感として理解していくことが多いんですね。想像力では補えない部分があって。でも現場がないということは、その発見もない。その感覚を持てなかったのがきつかったです。

――それでも演技の仕事をあきらめなかった、その理由はなんですか?

瀧内 お芝居をしたいという気持ちと、なんの確証もない自信(笑)。自分はもっとできる、もっといけると思っていました。若気の至りかもしれませんけど。

――そのころにはすっかり芝居の虜になっていたんですね。

瀧内 現場を重ねるうちに、自分はお芝居が好きなんだなって実感するようになっていきました。不思議な感覚なんですけど、自宅に帰ったときに解放感があるんです。いまも現場から帰ると、自分が生き生きとする感覚があります。それはうまくできたときに限りません。うまくいかなくて、悔しくて寝られないようなときにも、生きているなと思う自分がいるんですよね。

撮影 丸谷嘉長
スタイリング 後藤仁子
ヘアメイク 佐藤寛

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「被災者の役で7キロくらい痩せてしまいました」瀧内公美(34)の進む道を決めた“代表作との出会い”《思い出すだけで涙が出る壮絶な撮影》〉へ続く

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