昨年AmazonのCMでお茶の間の注目を集め、今年は大河ドラマ『光る君へ』で源明子を熱演中の瀧内公美(34)。2012年のデビュー以来、わずか2年で映画主演を果たすなど順風満帆な役者人生に見えるのだが……。役者として歩み始めた日々の記憶を辿る。(全3回の1回目/第2回、第3回を読む)
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「なにか違うな」の教員実習から映画のエキストラへ
――大学生のころは教員を目指していたんですよね。
瀧内 そうなんです。ただ、初めに大きかったのは東京に出たいという思いでした。地元の富山から都市部の大学に出たくて。でも父から、東京の大学に行くなら資格の取れるところでないと駄目だと言われたんです。ひとりっ子だったし、わりと厳しい家だったんですね。それでいろいろ考えて、もともと子どもが好きだったので、教育学部を志望しました。
――どんな学生時代でしたか?
瀧内 門限もあって、しつけに厳しい家から解放されたからか、ひとり暮らしを満喫していました(笑)。実家は富山の田舎のほうで、夜遅くなると信号が点滅しはじめるような場所だったんです。だから24時間営業のコンビニを見ただけで、「東京は夜でも明るいんだ」って感動して。コストコでバイトしていたんですけど、業務用サイズの商品や大きなぬいぐるみなどを棚に返却する仕事ばかりやっていました。バイトは本当に楽しかったです。
――大学では実際に教員免許を取ったんですよね。でも教員にはならず、俳優の道を選びました。どんな心境の変化があったんですか?
瀧内 大学4年生のとき、地元の小学校へ1ヵ月間くらい教育実習に行ったんです。その実習が思ったようなものではなくて。たとえば先生がたに休憩中はお茶出しをして、そのうえ好きなお茶の種類を覚えなければいけない。なぜみんな同じものではいけないんだろう、ややこしいんだなって、初めて社会の厳しさに触れたんです。
もちろんいい経験もさせていただきました。でもなにか違うなと思いながら、自転車で毎日通っていたら、たまたま小学校の前で映画の撮影をしていて。大人数が集まって、わいわい楽しそうだったんです。しかも私の好きな漫画の実写化作品だった。すぐに交通整理をしていた方に「エキストラは募集してますか?」と聞いて、ネットから応募しました。