「ハイテク兵器と誘導弾で勝てる」は妄想だった

また、ドローン兵器の開発や、通常は船から発射される対艦ミサイルを車輌しゃりょうから発射するように改良するなど、兵器のクリエイティブな使い方も模索しています。しかし、それでも2024年春頃までウクライナ軍の劣勢は補えませんでした。

このように、戦争においては「物量」そして兵站=ロジスティクスが重要であることが改めて認識された結果、日本でも有事の際に自衛隊の弾薬備蓄が数日程度しか持たない可能性がある点が問題視されるようになっています。

やはり戦争は物量であり、兵站なのです。そして弾薬の生産にはお金がかかります。平時から必要な量の弾薬を備蓄し、兵器を揃えるには巨額の財政資金が必要になります。民主主義国家にとっては、不都合な真実が露見したと言えるでしょう。

りすぐりのハイテク兵器と、標的に正確に命中する誘導弾があれば、戦闘準備はひとまず十分だというのは妄想だったようです。実際の戦場では、弾は足りず、なかなか命中せず、攻撃すべき敵は想定より遥かに多かったのです。

写真=iStock.com/Joel Carillet
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「民主主義は弱点になる」という不都合な真実

2つ目の不都合な真実は、民主主義は戦争を戦う上で“弱点”になるということです。民主的な決定、あるいは多くの国の合意を得ながら進める決定は、刻々と変化する戦争においては不利だということです。

ウクライナを支援するNATO諸国は民主主義国家の集まりです。意思決定には議会や世論への配慮が必要で、物事を決めるのには時間がかかります。また、野党の反発などを考慮し政府の意思決定は慎重になる場合があります。実際、最大の支援国であるアメリカの議会がウクライナへの軍事支援予算の可決に何カ月もの時間を要したことが、2023年から24年にかけてのウクライナの劣勢につながりました。

全体としても、NATOからのウクライナへの武器支援はあまりに遅く、かつ「小出し」、つまり「逐次的」になりました。ウクライナがNATOに強い不満を抱いたのがこの点です。

まずはミサイルです。思い返せば、戦争が始まった当初、欧米はウクライナへの中・長距離ミサイルの提供を拒否していました。ロシア領への攻撃につながり、戦争をエスカレートさせることが懸念されたのです。

しかし、ウクライナが戦場で不利と分かると、早々に方針は撤回され、ハイマースなど中・長距離攻撃が可能なミサイルシステムが供与されました。当初、供与されたハイマース弾頭の射程は80キロでしたが、新たに165キロの射程を持つミサイル弾頭ATACMSが、さらに同程度の射程距離を持つGLSDBも提供されました。