親の幸福度が高いと子どもの幸福度も高くなる

まず、日本では親の幸福度が高いと、子どもの幸福度も高くなり、親の幸福度が低いと子どもの幸福度も低くなる傾向があります。親子の幸福度には明確な正の相関関係があるわけです。

次に気になるのは、その強さです。親子の幸福度の関係の強さは、どの程度なのでしょうか。

石井特任准教授らの計測によれば、その相関の強さは0.25であり、より具体的には、親の幸福度が10%高くなると、子どもの幸福度が2.5%ほど高くなることがわかりました。

この結果から、「日本では親子の幸福度は確かに連動しているものの、その強さは比較的緩やか」だと言えるでしょう。

ちなみに、過去の海外の研究から親子の別の指標の類似性を見ると、出生時の体重の相関の強さは0.17~0.20で、肥満度を表す体格指数であるBMIの相関の強さは0.35でした(*4)。また、親子のメンタルヘルスの相関の強さは0.13~0.19となっています(*5)

これらの値と比較してみても、日本の親子の幸福度の相関の強さは、そこまでかけ離れているわけではありません。出生時の体重、BMI、メンタルヘルスと並んで、親子の幸福度は緩やかに連動していると言えるでしょう。

親子の幸福度はなぜ似てくるのか

日本では親子の幸福度に正の相関関係があるわけですが、これにはどのような理由があるのでしょうか。

まず考えられるのが遺伝による影響です。幸せの感じ方に遺伝的な要素が影響していると指摘されるため、親子の幸福度が似てくるのも、遺伝的要素が影響している可能性が高いと言えます(*6)

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次に考えられるのが生活環境の影響です。親子は生活を共にするため、生活スタイルだけでなく、趣味、指向も似てきます。さまざまな行動を親から学んでいく中で、幸せの感じ方も親子で似てくる可能性があります。

これら以外では、親の学歴や所得といった社会経済的地位の影響が考えられます。親が高学歴で高所得であるほど、子どもの生活環境は良くなります。このような子どもは、学歴も高くなり、その結果として所得も高くなる可能性があります。冒頭でも述べたように、親の所得が高くなるほど、子どもの所得も高くなる傾向があるため、これが子どもの幸福度を向上させると考えられます(*7)

以上のような複合的な要因から、親子の幸福度の類似性が高まると考えられます。