さらに、近畿圏や中部圏の中古マンション価格も、首都圏と同様に前年割れが続いている。東京都心の超高額物件を除けば、中古マンション価格はすでにピークアウトした可能性が高い。

もう1つの懸念は、住宅系REIT(不動産投資信託)の価格が下落している点である。

REITとは、保有する不動産から得られる賃料収入等を投資家に分配する金融商品である。賃料収入の増加や、保有する不動産の値上がりが予想されると、REITが買われて価格が上昇する傾向があるが、主に賃貸マンションなどの住宅を保有しているREITで構成される「東証REIT住宅指数」をみると、2021年の夏頃にピークを付けた後、上下動を繰り返しながらも徐々に水準を切り下げている。

これは、多くの投資家がマンションの賃料収入や住宅価格の先行きを慎重に見ている可能性を示唆している(図表1の太線)。

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調整局面に入っても、暴落は起こらない

以上を踏まえると、首都圏の新築マンション市場はすでに調整局面に入った可能性が高い。問題は、この調整が一過性にとどまるのかどうか、である。

今回の調整局面が、1980年代後半から1990年代の初めにかけて発生した、不動産への過剰投資に伴う価格急騰(不動産バブル)とその崩壊の再現であれば、マンション価格の下落は長期化するおそれがある。

また、2000年代の半ばに発生したミニ不動産バブルも、その調整が一巡するまでに数年かかっている。今回のマンション価格の調整についても、価格の上昇過程においてマンションへの過剰な投資が発生していたのであれば、今後の調整局面も長期化することになる。

幸い、今回は不動産バブルないしは住宅バブルは生じていない模様である。過去を見ると、住宅投資が日本経済の成長ペースよりも早過ぎた局面では、国内総生産(GDP)に対する住宅投資の割合が大幅に上昇した。

不動産バブルが発生した1980年代後半は最大で7%超に達しており、ミニ不動産バブルの2000年代半ばでは最大で4.6%だった。両局面とも、その後に住宅投資の対GDP比率の大幅な低下を余儀なくされている。

一方、2020年に発生したコロナ禍以降の景気回復局面において、住宅投資の対GDP比率は最大で4%程度にとどまっている。これは、コロナ禍以前の景気回復局面(2012~2018年)における住宅投資(対GDP比率)のピークである4.2%よりも低く、コロナ禍以降に住宅投資が過熱したとは考えにくい。

バブル期より高値でも、住宅バブルとは言えない

もっとも、少子高齢化が進む日本では、住宅取得世帯が全世帯に占める割合が趨勢的に低下しており、住宅投資の対GDP比率も中長期的な低下傾向を辿っている。対GDP比で4%程度の住宅投資であっても、今の日本では「過剰」な住宅投資だった可能性は否定できない。