なぜ街頭演説の数が圧倒的に少ないのか
一方で小池氏は街頭演説の数を少なくし、あえて離島や郊外で演説をするなど控えめな行動をとっている。
初の街頭演説は6月22日に八丈島で行い、23日には奥多摩町や青梅市でマイクを握った。29日には北千住駅前、30日には蒲田駅前、そして7月2日には秋葉原駅前に立ったが、他の候補に比べると演説の数が圧倒的に少ないと言えるだろう。
もちろん現職の都知事であるため公務との関係も考慮しなければならないが、それだけではないと永田町関係者は言う。
「演説の回数が少なく、しかも離島や郊外を回ったのは、各地の支持を固める狙いももちろんあると見られるが、それ以上に蓮舫氏との対決が盛り上がることを懸念したと考えられる。選挙戦が盛り上がれば盛り上がるほど、挑戦者である蓮舫氏が際立ってしまい、その中で逆転を許す恐れもあるからだ。都心で舌戦を繰り広げる蓮舫氏をかわすことによって、『小池vs.蓮舫』という構図を目立たせないようにしている」
選挙戦は一般的に、盛り上がらないほど現職にとって有利となり、また、固定の支持層や組織票を持っている候補にとって勝ちやすい状況となる。
小池氏は自民党や公明党の自主支援を受ける中、あえて選挙運動を控える戦略をとっていると言えるのだ。
「保守vs.リベラル」とは別次元の対決軸
対する蓮舫氏は渋谷や池袋、新宿など主要な駅前を中心に街頭演説を繰り返すほか、LGBT団体の街宣に参加するなど、従来型のスタンダードな選挙戦を繰り広げている。
「小池さんは光に光を当てるのは得意です。でも東京で広がる格差。光と影。だったら私は影に光を当てて、その影がなくなるまで光を当て続ける都知事になりたい」と聴衆に訴えかけて小池氏との違いを強調。
6月29日には明治神宮外苑の再開発について都民投票を実施することを追加公約として掲げるなど、争点作りにも取り組んでいるが、保守層への波及にはまだ課題が残ると言える。
このように三者三様の選挙戦が繰り広げられる中、石丸氏が小池氏や蓮舫氏から支持を奪う形で勢力を伸ばしていることが伺える。
ただ、石丸氏が支持を伸ばしている理由はそれだけではないだろう。
そこには「保守vs.リベラル」という旧来型の政治対立とは別次元の、既存政党への忌避感が、石丸氏を押し上げているという様子も見てとれるのだ。