雇用保険はなく、失業手当も受給できない
これらの活動をどの程度行うかは、各議員の裁量ですが、4年後の選挙の当選はもちろん、議員として価値ある仕事をするためにも、議会や委員会以外で、どれだけ地域住民の声を聞けるかが重要になってきます。
また、地方議員の任期は4年です。4年後の選挙で落選すれば、いきなり収入はゼロです。昨年の新宿区議会選挙では29人の現職議員立候補し、議長経験者2人を含む4人が落選しています。議員には雇用保険がありませんから、失業手当も貰えません。さらに自治体の首長と異なり退職金もありませんし、議員年金も廃止されているので、国民年金や国民健康保険に加入しなくてはいけません。
全国市議会議長会の調査(2021年)によると、市議会議員の平均年齢は59.8歳ですから、落選後、新たな就職先を見つけることも困難でしょう。私も含めた多くの地方議員が「兼業」をしている背景には、落選時へのリスクヘッジという側面もあります。もっとも、議員報酬だけで生活する議員が、落選での生活不安を恐れて当選自体が目的化したとすれば、民主主義にとって弊害でしかないので、私自身は議員の兼業には肯定的な立場です。
サラリーマンとして築いてきた地位やキャリアを捨てて、地方議員選挙に「転職」する最大のリスクはこの職業としての不安定さにあると思います。家族を養わなければいけない場合、さらにそのリスクは増えるでしょう。一部の資産家を例外として、立候補する前に、議員としての報酬以外の収入に一定のめどをつけることが必要になります。
自分の住む街を変えられる「やりがい」はすごい
「転職」で重要なのは、それまで仕事のキャリアが生かせる、ということでしょう。その点、地方議員はうってつけの転職先です。例えば、新宿区議会では私だけが、元新聞記者・編集者という経歴です。そこでマスコミで培った発信力を生かし、たびたび自身のSNSをバズらせています。その結果、「敬老祝い金の一部見直し」「小中学校の学校給食費無償化」「ベビーシッター助成制度の拡大」など、選挙の時に掲げた公約の多くを、就任1年以内に達成できました。
議員の仕事で役立つのは、職歴だけではありません。私は1歳児の父親という子育て世代の当事者でもあり、その経験から「保育園送迎時のシーツの持ち帰りが保護者の過剰な負担になっている」という問題を議会で初めて訴えました。
自分が歩んできた経験に基づいて、自分の住む街の政治が、明日少しだけ変わる。これは、地方議員という仕事にしかない「やりがい」だと思います。ぜひ、地方議員への「転職」を前向きに検討してみてください。