戦地では、ロシア兵よりも劣悪な状況に置かれる。英スカイニュースは、ネパールから2000人ほどがロシアによってウクライナ戦線に送られたとの見方を示したうえで、その一環として駆り出された35歳男性の事例を伝えている。

「まるで犬のように扱われた」

男性は、モスクワ郊外の陸軍士官学校(アバンガルド訓練センター)に2週間連行された後、4カ月半、ウクライナ東部ドネツクで戦闘に加わった。ネパール人兵士たちが大砲の注意をそらす「餌食」にされ、「まるで犬のように扱われ」たと証言する。「本隊のロシア兵は、我々の後ろにいるのです。前線に立たされるのは、(私たち)傭兵でした」

「恐怖です。人と人、銃弾と銃弾の戦いではないのです。私たちは(上空から)ドローンで攻撃されます。それはそれは恐ろしいことでした」

この男性の場合、もともとドイツの隣のルクセンブルクでの職のあっせんを希望していたが、母国のエージェントにロシア行きを勧められたという。母国の11倍の月収を約束され、ローンを組んで計1万4000ポンド(約270万円)ほどを支払った。

だが、予想だにしなかった戦地送りに。大金を失った挙げ句、投獄を覚悟で3度逃亡を図り、命からがら脱出する結果に終わった。

写真=iStock.com/VittoriaChe
※写真はイメージです

自らロシア軍の傭兵を志願する人もいる

カタールのアルジャジーラは、外交政策アナリストによる分析や現地人コミュニティの情報をもとに、主にスリランカ、ネパール、インドの人々が騙されロシアに送られていると報じる。各国からそれぞれ数百人ないし1000人規模の人々が、ロシア軍に従軍しているという。

南アジアが兵士採用のターゲットにされる背景に、経済事情がある。スリランカの政治アナリストであるガミニ・ヴィヤンゴダ氏は、アルジャジーラの取材に対し、スリランカの厳しい内情を語る。

スリランカでは経済危機と政治的混乱により、2022年から翌2023年にかけて大規模な飢餓の危機が生じた。法外な対外債務と加速するインフレで、燃料、医薬品、食料などあらゆる物資が不足した。

ロシアに従軍する匿名のスリランカ出身兵は、アルジャジーラに、スリランカの経済的混乱を鑑みれば、ロシア軍で命を失う危険性の方がはるかに懸念が少ないと語る。

広告通りの収入が得られないケースも

だが、経済的利益を求め命をかけて戦地へ赴いた南アジアの人々に、厳しい現実が迫る。ソーシャルメディアで目にした広告では、月給4000ドル(約61万円)を謳うが、広告通りの待遇を受けている者がいるかは怪しい。ある匿名の兵士は、税金控除後の月給はわずか65ドル(約1万円)だと明かした。