実際、安価に観光できるスポットは多い。旅行情報サイトの「トラベル」は、一人旅で訪れるべき日本の安価なスポットを掲載している。「日本は一人旅の旅行者にとって、手ごろな値段で楽しめるアトラクションや体験が多く、予算内で楽しめる旅行先だ」と記事は述べる。

朱色の鳥居が立ち並ぶ京都の伏見稲荷大社や、ネオンが美しい大阪の道頓堀、原宿の喧噪とは無縁の明治神宮など、名所中の名所でも入場料を取らないケースは多い。

海外メディアが「安い東京」に大注目している

観光地としての東京の安さは、その他のランキングでも裏付けられている。英タイムズ紙は独自ランキングとして、「2024年の安価な旅行先26選」を掲載。うち1つに東京を取り上げ、「東京は物価が高いというイメージがあるが、どのような予算の旅行者にも対応できる素晴らしい街でもある」と紹介している。

記事は、カプセルホテルはプライバシーを保ちつつ安価に宿泊できると紹介。ほか、コーヒー1杯350円、夕食1100円、ビール580円など、欧州と比較して安い物価を取り上げる内容だ。

これとは別に英BBCは、「旅行予算にさらなる価値を生む都市5選」を掲載している。リスボン(ポルトガル)やブエノスアイレス(アルゼンチン)と並び、日本の東京が選ばれた。日本のなかでは物価が高い部類の東京だが、「シンガポールや香港のような同じアジアの都市よりも手頃な価格となっている」と指摘する内容だ。

BBCはさらに、「他国がインフレと戦っているのに対し、日本は円の通貨力を維持すべく、数年にわたりデフレとの戦いを続けてきた」とも背景を論じている。

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日本人にとって海外旅行は「夢のまた夢」になる

訪日客で街が再び賑わうようになったこと自体は、喜ばしい状況だ。単に安いだけでは人は訪れない。訪日客の回復は、繊細な味覚のフード、ていねいで礼儀正しいサービス、日本古来の美とモダンなテクノロジーの融合した光景など、日本への訪問に高い価値を感じる海外客が多いことを裏付けている。

だが、手放しで喜べない現状がある。日本の安さが追い風になっていることは事実だ。物価の安さで行き先を決めるスタイルは、かつて日本から途上国へと、収入の少ない若者が押し寄せていた状況を彷彿とする。物価高騰の欧米から見れば、日本は低予算で長期滞在できる国へと明らかに変化した。私たち日本人としては、自らが住む国への視線が変わりつつあることに、戸惑いを覚えざるを得ない。

円安が猛烈な勢いで進行するいま、平均的な私たち日本人にとって、海外旅行など夢のまた夢となってしまった。海外客に日本を楽しんでもらう好機とはいえ、極端な円安の是正が望まれる。

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