記録的な円安で、訪日客が増加

東京が安い都市に急浮上した最大の原因は、円安にある。ブルームバーグは今年2月15日、「円安のうちに日本にバーゲン価格で旅行(Bargain Vacation)する方法」と題する記事で、33年ぶりの円安になっていると報道。アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)などが積極的な利上げ策を実施しているのに対し、日本の中央銀行(日銀)はいまだに金利を最低水準に据え置いており、ギャップで円安が促進されていると指摘する。

こうした円安に押され、訪日客は増加している。日本政府観光局(JNTO)が発表する「訪日外客数」データによると、昨年の訪日外国人旅行者数は2507万人に達した。東京都の人口の1.8倍にあたる外国客が日本各地に押し寄せた計算だ。コロナ前の2019年に記録した3188万人には及ばないものの、2022年と比較して555%増の急激な回復をみせている。

阻害要因がないわけではない。ブルームバーグは、アメリカを起点に考えた場合、アジア行きの便で価格が高い傾向にあると指摘。パンデミック後の便数の回復が、アメリカ=ヨーロッパ路線と比較し、アメリカ=アジア路線では遅れているためだという。それでも大幅な円安が追い風となり、日本行きの便に飛び乗る海外客は多い。

日本での休暇
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3つ星レストランがリーズナブルで楽しめる

円安をポジティブに捉えれば、日本を世界に知ってもらう好機でもある。東京は世界一ミシュランの星付きレストランが多い都市としても知られるが、円安でさらに気軽に足を運びやすくなった。「ミシュランガイド東京2024」によると、三つ星12軒、二つ星33軒、一つ星138軒の、計183軒の星付きレストランが東京に集中している。

こうしたレストランが、海外客にとって円安で安価で楽しめるようになった。英金融サービスのジョン・ルイス・ファイナンスは、「ミシュラン掲載のレストランがリーズナブルに楽しめる世界のトップ都市」特集にて、「王冠は東京に」と講評。

星付きレストランの「創作麺工房 鳴龍(大塚・担々麺)」「SOBA HOUSE 金色不如帰こんじきほととぎす(新宿・ラーメン)」「銀座 八五(ラーメン)」を含め、東京ならミシュラン掲載の77軒を比較的安価に楽しめると紹介している。

無料施設の多さも追い風に

食以外では、無料ないし低価格で見学できる施設が多いことも日本旅行を促す誘因となっている。豪Yahoo!ファイナンスは、「ありがたいことに、日本には無料で楽しめる観光スポットがたくさんある」とコメント。

神社やお寺は入場料がかからない場所が多く、美術館や博物館も特定の日が無料になるなどと取り上げている。東京都内に限れば鉄道網が発達しており、500円もあれば1日の交通費をまかなえる、とも記事は述べる。