日本経済凋落の元凶は大企業
たとえば教育や政治、行政のさまざまな審議会や有識者会議に、人をたくさん送り込んで、民営化と規制緩和を主張しました。成果があったでしょうか?
JRはドル箱の新幹線を抱える東海を除くと、どこも経営難。郵便局はサービス低下が都市部でも進むばかり。そもそも経済で成果が出ていないのだから、「民間の知」なるものがロクに機能していないのは明らかですので、とりあえずまずは景気と経済をなんとかすることに専心すべき。なのに、声の大きなビジネス・オピニオンリーダーが周回遅れの主張を繰り広げていて、教育や政治、行政などのセクターは多大な迷惑を被っています。
円安が進み「安い日本」になりましたが、輸出産業だけがたいへん好調です。輸出ビジネスを手掛ける大企業はのきなみ増収増益ですから、本来であれば企業が社員に人件費を通じて還元すべきです。それを怠ってきたというのがあります。だから物価高で苦しんでいるのに、われわれの給料が伸びない。下請け企業や系列企業にも、利益を還元していません。賃上げも自分たちだけ。中小零細企業への波及効果は限定的です。
誤解を恐れずに言うと、日本社会と日本経済凋落の諸悪の根源は大企業。だから与党である自民党としては、自分たちの支持母体でもあるので強く言えないということもあるでしょう。
新卒一括採用は有害でしかない
大学生に3年生から就活させるのもどうかと思います。日本人の知力がろくでもない理由として、「大企業就活説」を半分冗談、半分本気でぼくは信じていて、新卒一括採用という企業にメリットの大きなシステムで、エントリーシートとテキトーな面接で「コミュニケーション能力を見る」。
大学を卒業して2年目とか3年目の学生とほとんど変わらない面接担当が兄貴風を吹かせて、圧迫面接をやっているわけですよ。そんなので、人材のなにがわかるのでしょうか? 無意味です。
しかも、この大企業就活のせいで、大学生たちは学年が上がるほど勉強に手が付きません。無意味どころか有害です。
でも新卒一括採用は、大企業の、特に人事部にとっては低コストで合理的なシステムです。巷にいわれるような学生の利益ではなく、企業都合です。そもそも法律で定められているわけではないから、やめたければやめればいいわけです。やめないのは企業にとって楽だからです。人事に手間とコストがかかりませんから。
職務範囲を規定して採用するジョブ型雇用待望論もありますが、本気ならこちらも民間で好きに導入すればいいわけです。でも、実現しないまま。これ、政治や行政の責任でしょうか。
最近は少し変わりつつありますが、この構造では就職したい学生にとっては真面目に勉強するのが無駄に見えてしまうのです。学生に勉強するモチベーションがわかない。どうせ就活が“宝くじ”みたいなものだからです。言い換えれば、この構造を理解すれば、就活がうまくいかなかったとしても腐らずに相対的にマシな転職市場で勝負するのが吉です。