朝ドラは「かけ算」
ドラマ、ことさら朝ドラは作品と視聴者の「かけ算」だと思っている。『ブギウギ』は特にその性質が強かったと感じる。視聴者に豊かな受け皿があれば、作品と響き合ってどこまでも飛んでいける。翻って、視聴者に負の感情しかなければ、ひたすら負がかけ合わさって積み上がるのみだ。
この時代、いろんな朝ドラがあっていいじゃないかと筆者は思う。モデルと題材と、視聴者への敬意さえ忘れないでいてくれたなら、そして半年間見続ける価値のあるもので、前向きな気持ちにさせてくれるものでさえあれば、「朝ドラはかくあるべき」などという縛りは取っ払ってよいのではないか。
「真面目に本気で取り組んだけれど、諸般の事情から所々に綻びがある作品」と、「最初から視聴者・観客を見くびって手抜きをしている作品」は、全く別物だ。
『ブギウギ』は感性に訴えてくるドラマでありながら、よく練られた作劇だと思うし、「福来スズ子の歌手人生」と「歌の力」を見事に描き切った。ほぼ毎週ステージシーンがあるという前代未聞のミッションに果敢に挑みながら、「エンタメとは何か」を問いかけてくる音楽ドラマに仕上げていた。歌が心を震わせる作品だった。
後に続く朝ドラの作り手の方々には、どんどん自由に新しい挑戦をして、これまでに見たことのない朝ドラを作っていただきたいと願うばかりだ。