チップ製造は台湾、韓国、中国頼み

2023年、チップラー(奇普楽)という中国の半導体スタートアップ企業が、米国企業の手放したチップレット関連の特許を取得したことが明らかになった。そのあたりから中国半導体産業でチップレット関連の研究開発は加速した。半導体支援策の強化で中国は、チップレット分野の技術向上も目指しているはずだ。

一方、米国が強力な支援を行うインテルについて、先行のTSMCなどと互角に競争できる製造体制を実現できるか否か、不確実な部分は残るだろう。1990年代以降のIT革命の加速で、米国企業はチップの設計開発などソフトウェア分野に集中して経済成長を実現した。チップの製造は台湾、韓国、中国への依存が高まった。

2023年10~12月期、世界のトップ10のファウンドリー売上高に占めるTSMCのシェアは61.2%(前期は57.9%)に上昇した。インテルはトップ10に入らなかった(台湾トレンドフォース調査)。米国は日欧などにも連携を求めながら半導体関連の対中規制や制裁を強化するだろう。

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米中対立が日本企業にとってチャンスである理由

インテルの製造技術向上ペースにもよるが、これから、米国は汎用型の半導体、関連装置や部材にまで対中制裁などを拡大・強化する可能性は高い。半導体関連分野で米中の対立はさらなる先鋭化に向かうだろう。必ずしも楽観はできないが、わが国はそうした環境の変化を半導体関連企業の競争力強化につなげることができるはずだ。

米中を中心に、主要国は半導体分野で補助金などをさらに積み増し、自国内で、自国企業を中心に最先端チップの製造を目指すことになるだろう。そのため、台湾と韓国のシェアが高まった半導体製造能力の地理的分散は激化する。わが国半導体関連部材、製造装置メーカーの収益機会は増えるだろう。

チップレットの重要性上昇も、世界の半導体産業の構造変化を勢いづける。近年、TSMCでさえ微細化の加速は難しくなりつつある。それに対し、AI急成長などでより高性能のチップ需要は想定以上のスピードで増えた。需要に対応するためにチップレット生産の重要性は高まる。