地下水への影響を主張するオカルト
川勝知事は「大井川の流量減少問題が解決されれば、着工を認める」などとさまざまな場で話している。
このため、JR東海は2022年4月、東京電力リニューアブルパワー(東電RP)の内諾を得て、県境付近の工事中の県外流出を解決するための田代ダム取水抑制案を提案した。
これに対して、川勝知事は河川法違反などを唱えて、田代ダム取水抑制案をつぶすことに躍起となった。
それどころか、田代ダム取水抑制案を議論している最中に、今度は山梨県内のリニア工事まで問題にしてしまう。
実際には、行政権限が及ばないのに、山梨県内の調査ボーリングが水抜きだとして静岡県の地下水に影響があると主張を拡大させた。
県境付近に限らず、地中深くの地下水は絶えず動き、地下水脈がどのように流れているのかわからない。県境付近の地下水の所有権を主張する静岡県の「地下水圏」など存在しない。
つまり、静岡県の地下水に影響があるという主張は、科学的な社会常識を超えた、「オカルト世界」の話である。
JRへの言い掛かり「サイフォンの原理」を発見
この問題をさらに複雑にさせたのが、冒頭で紹介した渡邉氏だ。氏は、JR東海の「地質縦断図」を基に「静岡、山梨両県の断層がつながっていることを発見した」と主張したのである。
JR東海が提出した「地質縦断図」の断層を示す赤い斜線が、まるで管のように見えるから、つながっていると見えたようだ。
この発見を受けて、昨年2月28日の会見で、川勝知事は「山梨県内の調査ボーリングをするという差し迫った必要性は必ずしもない」と勝手に決めつけた上で、「山梨県側の断層および脆い区間が静岡県内の県境付近の断層とつながっている。それゆえ、いわゆる『サイフォンの原理』で、静岡県内の地下水が流出してしまう懸念がある」と主張した。
水などの液体を、高いところに上げてから、低いところに移すために用いる曲がった管を「サイフォン」と呼ぶ。管内を完全に真空状態にして、圧力差を利用して、吸い上げ、低いほうに移すことが「サイフォンの原理」だ。
家庭用ストーブの石油ポンプを使った移し替えをはじめ、ダム湖から発電所まで配管内を真空にしてダム湖の水を吸い上げる発電に応用される。
山梨県内の断層を掘削すると圧力が掛かり、静岡県内の地下水を山梨県内の断層に引っ張ると考えて、川勝知事は「サイフォンの原理」と呼んだのだ。