核家族社会で誰が子どもの面倒を見るのか
ではなぜ今、それが求められているのでしょうか。
ひと昔前の日本は、大家族社会でした。きょうだいが4人も5人もいて、お祖父ちゃんやお祖母ちゃんも一緒に住むのが当たり前だったし、近所の人たちとのコミュニケーションも盛んでした。私が子どもの頃なんかは、「今日は仕事でお父ちゃんもお母ちゃんも家にいないから、ちょっとお隣さんに子ども見といてもらうわ!」というのが日常茶飯事だったんですね。
でも今は、いわゆる「核家族」が大半を占めます。子どもはだいたい一人っ子や二人が多くて、お祖父ちゃんやお祖母ちゃんは別の場所に住んでいるというケースです。また、ご近所さんとの付き合いも減ってきている。都会のマンションに住んでいれば、「お隣さんの顔も知らない」という人も、少なくないと思います。
こういう環境においては、地域レベルで人と人が支え合うことが難しくなってきています。例えば、両親が共働きなら、仕事に行っている間、子どもの面倒は誰が見ますか? お祖父ちゃんやお祖母ちゃんは遠くに住んでいるし、顔も知らないご近所さんにも頼めない。必然と、保育園や子どもの一時預かりのような施設が必要になってくるわけで、その整備をするのが行政の仕事です。
子育てを家族で完結させず、地域で支える
昨今のニュースを騒がせている子どもの虐待問題もそうです。
昔だったら、ご近所さん同士が仲良しだったので、虐待を含む家族内の問題も、みんなで解決しようという雰囲気がありました。でも今は、お隣の家族が、どんな様子かまったくわからない。たとえ子どもが虐待されていたとしても、それを知るすべもなければ、救うすべもありません。
だからこそ行政が介入して、児童相談所を作ったり、子ども食堂を運営したりします。子育てに悩むお母さんやお父さん、親とうまくいかない子どもたちのセーフティネットを作って、行政が積極的に関わりを持っていく。子育てを家族だけで完結させるのではなくて、行政を通じて、地域全体で支えていくイメージです。
そのうえで、子育てをする家族の生活面のサポートも、しっかりと行います。虐待問題で必ず取り上げられる「子どもの貧困」というテーマがありますが、貧困なのは子どもだけじゃない。その親、その家庭自体が貧しいところに問題があります。だから、子どもの医療費や給食費を無料にしたり、親子で遊べる無料の施設を駅前に作ったりして、経済的にも子育てしやすい環境を整えていきます。
ドント、メイ、ベターで削減した予算を使って、マストの政策を実現していく。このやり方で、私は明石市で、多くの子ども政策を実施していきました。「お金」の話からは少しそれますが、今、なぜ子ども政策が大切なのかを、もう少し補足させてください。