「僕の中でゴジラは戦争が歩いているような存在」
――戦後という舞台設定はどのように生まれたのですか?
山崎 もし自分が『ゴジラ』を撮るなら…と昔から考えていたものです。というのも、僕の中でゴジラは戦争が歩いているような存在なんです。特に1作目はゴジラを戦争の象徴として描いた反戦・反核映画ですから、そこは踏襲したいと。戦後の何もない時代、ゴジラとどう戦うのかを考えると映画的に面白そうじゃないですか。戦い方に関しては、『アルキメデスの大戦』(19年)の時に監修をしていただいた後藤一信さんと話し合いながら作っていきました。
――映画の内容に関してはゼロベースだったのですか?
山崎 具体的な話になる前に「僕がやるならこうだと思う」とプロットを書いて出しました。先手必勝です(笑)。
――ゴジラのデザインは山崎監督と「ゴジラ・ザ・ライド」にも参加された田口工亮さんですね。ベースの造形はライドですか?
山崎 最初はライドと変えようと、自分で絵を描いて、3D造形ソフトで作ってテストもしましたが、最終的に「ライドゴジラだね」と(笑)。もともと理想のゴジラを目指してライドゴジラを作ったこともあり、あのデザインに戻っていきました。ただし、背びれを狂暴にしたり、ディテールを上げたりと修正はしています。またライドは上から見る画が多かったので、頭部を小さくしましたが、今回は人の目線で見上げる画が多いので逆に少し頭を大きくしています。見上げた時にカッコよく決まるバランスで調整した感じです。田口君はこれまで何度も組んできたし、学生時代の先輩である竹谷隆之さんの『シン・ゴジラ』に対抗できるゴジラを作れるのは彼しかいないということです。
触れられるくらい近いゴジラ、対峙する人間の思い
――山崎監督が特にこだわったゴジラの見せ場は?
山崎 いくつかありますがやっぱり街を破壊するシーンですね。ゴジラが目の前まで迫ってくる悪夢のようなイメージをずっと思い描いてきたので、触れられるくらい近い位置からゴジラや壊れるビルを描きました。自分の中では、やっとたどり着いたなという思いです。昭和の街並みは『三丁目の夕日』シリーズや『海賊とよばれた男』(16年)のスタッフが作っているので、当時の資料をかなり細かく調べて再現してくれました。