抗生物質が生み出した「薬剤耐性菌」
抗生物質を乱発することで、薬剤耐性菌が広がる恐れがあります。
薬剤耐性菌とは、その名の通り、薬剤に耐性を持っている、薬に耐えて生き続けてしまう病原体のことです。
それが巡り巡って、私たちの健康を阻害してしまうのです。
医療機関の中で感染する細菌として、よく知られているのが「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌」(MRSA)です。
黄色ブドウ球菌は、ヒトや動物の皮膚や消化管の表面ににいるグラム陽性球菌になります。
普段は無害なのですが、外科手術などで、皮膚の傷口から感染して、肺炎や腹膜炎などの重度の感染症を引き起こす原因になっています。
この問題に対処するために抗生物質のペニシリンが開発されて、投与されたのですが、ペニシリンに耐性を示す株ができ、世界中に広がっていきました。
これに対応するべく開発されたのが、メチシリンです。1960年ごろから使用されるようになりましたが、それに耐性を示す、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌が出てきたのです。
ニワトリやブタ、ウシなどの薬剤耐性菌が人間に感染する可能性
医療現場で検出される黄色ブドウ球菌のほとんどが、メチシリン耐性株なのです。薬剤耐性菌によって、感染した場合、別の薬を使わなければならず、とても面倒な状態になってしまうのです。
この事例のように抗生物質をむやみに使うと、細菌が抗生物質に耐性化して効かなくなるのです。新たに耐性化した細菌ができないようにするためにも抗生物質は必要な時だけに使用をとどめる必要があります。
また、薬剤耐性菌は別のルートで蔓延する可能性もあります。
農産業や畜産業で使われている抗生物質は、医療用を上回る量が使われているとされます。
日本でも動物用の抗生物質は人間用の抗生物質の倍以上使われているので問題になっています。そのため、ニワトリやブタ、ウシなどの薬剤耐性菌が人間に感染するのではないかという可能性が指摘されているのです。