もの忘れと認知症の違いは「他人からの指摘」がサイン

多くの人が気になるのが「もの忘れと認知症の違い」ではないでしょうか。わかりやすい判断基準は、周りの人からの指摘です。自分で「もの忘れがひどい、認知症かも」と状態を認識できているうちは認知症ではありません。家族や職場の人、友人などが「これまでと違う、おかしいのでは?」と感じたり、それを指摘されたりしたら、もの忘れ外来や脳神経内科などを受診したほうがよいでしょう。

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アルツハイマー型軽度認知障害・認知症の初期は最近の記憶がなくなります。そのためM美さんのように牛乳を買ったことを忘れて何本も冷蔵庫に並ぶ、昨日も今日も肉ジャガをつくってしまったなどの症状は要注意。他にも薬の飲み忘れが多くなった、小銭の計算ができず会計でお札ばかり出す、仕事で使っていたシステムがバージョンアップされた途端に使えなくなったなどが頻繁に続く場合は、軽度認知障害または認知症の初期かもしれません。

認知症の診断・治療は早ければ早いほど良い

「認知症=高齢者の病気」というイメージがありますが、アルツハイマー型認知症の原因となるアミロイドβの出現は、発症の20~25年前より始まっています。つまり早ければ40代、50代で認知症の入口に一歩入り始めているということ。

例えば75歳でアルツハイマー型認知症を発症するとした場合、50~55歳頃には“シミ”と呼ばれるアミロイドβが脳の神経細胞外に現れます。これがきっかけとなり、神経細胞内にある「タウタンパク」が過剰なリン酸化を受けて変性、“ゴミ”となって蓄積します。タウタンパクとは、細胞の骨格をつくる重要なタンパク質で、家でいうと柱のようなもの。柱がダメージを受けて粉々になるため、家の構造が保てなくなるのです(図表2)。

ゴミがたまった神経細胞は壊れて死滅。この現象は記憶を司る「海馬かいば」に起こります。年数が経過すると広範囲にわたり、海馬が萎縮。脳内にすき間が現れて軽度の記憶障害が始まり、そのうち年間5~15%が認知症に進行します。

※赤丸で囲った部分が海馬