裸祭りだけではない…ニッポンの祭りが消滅してしまう

黒石寺だけではなく、日本には「裸祭り」が多数、存在する。その種類・形態はさまざまだが、大分県の若宮八幡神社裸祭りや岡山の西大寺の会陽などが有名である。最も有名な裸祭りは「相撲」だろう。相撲は、元は五穀豊穣を祈って、神々を喜ばせる神事である。

なぜ、裸になる必要があるかといえば、理由は諸説ある。産声をあげた時の清浄無垢むくな姿で神と交渉するため、また、年越しや季節の節目に穢れや災厄を落とすため、などである。

特に岡山県においては裸祭りの歴史は古く、数も多い。現在6カ所の寺社で開催されているが、最盛期には108の裸祭りがあったと言われている。

なかでも西大寺の会陽は500年以上の歴史があり、日本最大規模、1万人の男たちがぶつかり合う裸祭りで知られている。昭和の時代には、2万〜3万人の男たちがせめぎ合い、けが人多数、時に大きな事故も出る激しいものであったという。

だが、近年は暴力団排除の機運や事故防止措置も相まって、飲酒や刺青、携帯電話持ち込み禁止など注意事項が増えた。安全と祭りの盛り上がりの両立は難しく、痛し痒しといったところだろう。

来年の西大寺会陽は2月17日、4年ぶりにコロナ前の同等の内容、規模感で実施される。西大寺会陽と黒石寺蘇民祭で、明暗が分かれた形となったが、背景には地元経済界のサポート力がありそうだ。

鵜飼秀徳『絶滅する「墓」 日本の知られざる弔い』(NHK出版新書)

西大寺会陽では地元有力企業である両備グループや岡山ガスなどしばしば祝主と呼ばれる存在となり、福男から宝木を受け取る感謝として、福男をはじめ地域に還元できる取り組みをしている。

両備グループは起業100周年と会陽500周年が合致する2010年に祝主になっている。同グループの小嶋光信代表はこの時、「両備グループの100周年には、祝主(になる)と5年前から心に決めていました。(中略)この祭りを通じて、両備グループ50社の全社的結束が強まったと感じられた」と祭りへの並々ならぬ思いを、公式ホームページに掲載しているほどだ。

祭りの消滅は、同時に地域力を低下させる悪循環を生んでしまう。人口減少時代の、地域の祭りの維持は極めて難しい。裸祭りに限らず、今後、多くの祭りが消滅してしまうことだろう。祭祀さいしの当事者だけではなく行政や経済界も一体となって支え、盛り上げていく仕組みを、構築する時期にきていると思う。

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