言い負かすことを目的にしてはいけない
勝つことを目的にしている限り、ポジションが高かったり味方が多くないと、なかなか勝てません。相手を言い負かして、それでうまくいく場合もあるにはありますが、日本ではそうしないほうがいいことのほうが多いと思います。
特に会社では、上司と論戦を繰り広げたところで、不利な戦いになるのは目に見えています。初めから上司のほうが立場が上で、会社のことを決めるのも上司です。議論そのものには勝てたとしても、かえって悪い結果になる可能性もあります。だからこそ、あくまで上司を、自分が思う流れに乗せていくという別の戦い方をすべきです。
一番よいのは、自分の考えを、さも相手自身が考えたことのように仕向けていく、ということです。
たとえば、会社で何か企画やプロジェクトを通したい時、「これをやりたいです。これがうまくいくと思うんです」と言い続けて説得を試みるより、決済者である上司自身がその案を思いついたかのように思い込ませたほうが、企画案やプロジェクト案が通る可能性は上がります。上司にとっては「自分の企画だから、ぜひとも進めたい!」という意識になり、サポートをしてくれるようになるんです。
上司に「自分で選んだ」と思わせたらこっちのもの
そして、あなたはというと、「その上司の手を借りて企画を動かしている」ポジションで、問題なくそのプロジェクトを進めていけます。
ちなみにこれは、心理学的な裏付けがあります。
コロンビア大学の心理学博士であるハイディ・グラント・ハルバーソンの著書『やってのける 意志力を使わずに自分を動かす』(大和書房)によれば、自分で選んでやっていることにこそ、人間は高いモチベーションを発揮することが、さまざまな実験データから説明されています。なので、上司に決めさせるほうが思い通りになりやすいのです。
逆にへたに説得しようとすると、かえって相手はつむじを曲げてしまうこともあります。これは心理学で「ブーメラン効果」といい、わりと広く見られる話です。なので、説得せず、いかに思い通りに動いてもらえるかに取り組むほうがいいでしょう。