最大12年の寿命を失うおそれがある

有毒なスモッグに包まれたニューデリーは、一部の学校を閉鎖するなど対応に追われた。ロイター通信によると、人口2000万人を擁するこの首都の住民のあいだで、目の炎症や喉のかゆみなどの苦情が広がっている。AQI640は健康に害を及ぼすとされる大気質であり、これ以下の400~500でも持病のある人には危険とされる。

デリーの大気質は深刻なまでに悪化している。エコノミスト紙が11月2日に報じたところによると、2022年にデリーの空気が「良好」または「満足」とみなされたのはわずか68日。デリーの大気は主要都市の中でも最悪となっており、以降3カ月は危険な状態が続くと予想されている。南アジアでは大気汚染により年間200万人以上の死者が生じており、デリーの住民は汚染により最大12年の寿命を失うおそれがあるとする調査結果もあるという。

ニューヨーク・タイムズ紙は、こうした深刻に汚染された大気には非常に細かい微粒子が含まれていると指摘し、継続的に吸い込むことで、がんや糖尿病などの疾病につながるおそれがあると強調している。

インドで深刻化する大気汚染。街がスモッグでおおわれている。(写真=Prami.ap90/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

最悪レベルの山火事に相当

比較として、カナダで最悪とされる山火事が続いた際にニューヨークで観測された汚染レベルは、微粒子の濃度が1立方メートルあたり約117マイクログラムであった。汚染が深刻だった11月3日、デリーの平均濃度は同約500マイクログラムとなっており、特定の地域では643マイクログラムにまで跳ね上がっている。山火事でも微粒子による健康被害が注視されたが、その数倍汚染された大気にニューデリーの住民はさらされたことになる。

北部のニューデリーに加え、10月下旬には西部のムンバイでも大気汚染が深刻な問題となった。当時のムンバイの大気汚染は、デリーの汚染レベルを上回る値を観測している。フィナンシャル・タイムズ紙によると、ムンバイではスモッグなどが発生し、AQI値は市の一部で300を超えた。IQAirによると、ムンバイは世界でも中国・北京に次いで2番目に汚染された都市であり、デリーも109都市中6番目に汚染された都市となっている。

タバコを吸わない人でも肺が黒く染まる

以前には大気汚染により、非喫煙者の肺が黒く染まっていたことが確認されている。インドの著名な心臓血管・心臓胸部外科医であるナレシュ・トレハン医師は2015年、タイムズ・オブ・インディア紙に対し、ショッキングな研究結果を明かしている。