「ポイント改悪」と騒いでいる場合ではない
5900円でも「高いなあ」と思っている日本人から見ると、とんでもない値段だが、他に有力ECサイトがないこれらの国では、この値段が通ってしまう。「嫌なら使わなくていい」と言われても、アマゾン経済圏にどっぷり浸かった人々は抜けられないのだ。
では日本だけがなぜ安いのか。ある業界関係者は「楽天市場の存在が重石になっている」と指摘する。アマゾンは自社倉庫のメーカーなどから仕入れた商品を在庫しておき、ネットで注文が入ると配送する仕組み。出店企業に仮想商店街の軒を貸している楽天市場とはビジネスモデルが異なるが、日本におけるアマゾンの流通総額は楽天市場とほぼ拮抗しているとされる。
不用意にアマゾンプライムの会費を引き上げれば、バランスが崩れて利用者が楽天市場に流れかねない。この微妙なパワーバランスが米欧より6~7割安い日本の会費に表れている。逆に楽天の存在がなければ、日本の会費も米欧並みの1万5000~2万円になっていたかもしれないのだ。
楽天の場合「ポイント改悪」と言っても1~2%。つまり「1万円買って100円から200円」のレベルだが、楽天がなければ日本のECユーザーは年間1万~1万5000円も余分な出費を強いられる、という仮説が成り立つ。楽天プライムカードのSPUが4倍から2倍に減ったくらいで、騒いでいる場合ではないのである。
既得権益をぶち壊した楽天の存在意義
携帯電話も楽天が参入していなければ、大手3社による寡占が続き、月額7000円強で高止まりしていた可能性が高いし、フィンテックもメガバンクや大手証券会社の対応が遅く「リアルの窓口に足を運んで高い手数料を払うのが当たり前」という状況が続いていたかもしれない。
流通、金融、通信。大資本ががっちり支配していたこれらの分野に新しいやり方で挑戦し、その市場を民主化したのが楽天だ。当然、既得権益を奪われた人々は楽天についてネガティブな情報を流す。楽天市場なら「実際に物を見ずに買うなんて、粗悪品をつかまされる」、金融なら「大事なお金をそんな危なっかしいところに預けて大丈夫か」、通信では「つながらない携帯なんて使い物にならない」。それがネットで増幅され「アンチ楽天」のムードが生まれる。今回の「ポイント改悪」もそうした流れの一つだろう。
将来、楽天経済圏が圧倒的に強くなれば、楽天そのものが既得権になる可能性はある。だが少なくとも現時点では、楽天が存在することで、これらの市場に競争が生まれ、結果として消費者、国民の利益が守られている。相変わらずネットでは「楽天はもうお終い」と声高に言う人々が後を絶たない。彼らは「ECの会費や、金融の手数料や、携帯電話の料金が爆上がりする未来」を望んでいるのだろうか。