数十羽を捕まえたところで、異なる特徴の海鳥を発見
前回見つけられなかったということは、個体数が少ないということだ。これはすなわち、より多くの海鳥を確認しなければならないということを示している。
地上に落ちている海鳥を拾っては足環をつけ、時には顔に張り付いてくる海鳥をひっぺがして足環をつける。
数十羽を捕まえたところで、ついに異なる特徴を持つミズナギドリが見つかった!
シロハラミズナギドリ同様に、背が黒く腹が白い。しかし、シロハラよりもくちばしが長く、シロハラに特徴的な翼の裏の黒い模様がない。
これは、セグロミズナギドリだ!
さらに探していくと、数は少ないもののセグロミズナギドリが一定の頻度で見つかる。数えてみると、標高800m以上では見つかった海鳥の6%がこの種だった。
ミズナギドリが陸地に飛来するのは、基本的には繁殖のためだけだ。彼らはここで繁殖している可能性が高い。
状況証拠から結論づけられたこと
捕獲をしていると、セグロミズナギドリのくちばしや足が土にまみれていることに気づいた。ということは、彼らは穴の中に入っているのだ。ミズナギドリ類は地面に穴を掘って、その中で卵を産み子供を育てる。土が体についているのは穴の中にいたことを示している。
セグロミズナギドリは世界に広域に分布する種類だが、小笠原で繁殖する集団は固有の亜種とされている。ただし、この亜種の繁殖地がどこにあるかはわかっていなかった。奇しくも南硫黄島調査を行ったのと同じ2007年に、父島列島の東島でこの鳥の営巣が初めて確認されたが、それ以外に繁殖地は見つかっていない。
残念ながら南硫黄島では巣そのものを見つけることはできなかったが、状況証拠からセグロミズナギドリは山頂周辺で繁殖しているものと結論づけられた。
なお、先述の通りセグロミズナギドリもシロハラミズナギドリも背中が黒くお腹が白い。実はミズナギドリ類はだいたいこの色彩をしている。ちょっと名前が無個性すぎやしないかい?