ツキノワグマはアメリカクロクマより気性が荒い

この経験でつくづく思い知ったのだが、アメリカクロクマとツキノワグマでは性質が全然違うということだった。やっぱり、ツキノワグマは気性が荒い。そういえば、ミネソタにアメリカクロクマの調査で行ったとき、森林研究所の研究者デイヴさんもいってたなあ。

小池伸介『ある日、森の中でクマさんのウンコに出会ったら ツキノワグマ研究者のウンコ採集フン闘記』(辰巳出版)

「中国で同じことを何回かやってきたけど、やっぱりあっちのクマは穴から出ちゃうよね!」

日本でも2度の成功例がある。アメリカで30頭も捕獲できたという自信もあった。

武者修行を積んだ自分ならば成功するだろうと思っていたのだが、そこまで甘くはなかったのだ。

しかし、そんな散々な目に遭っても、私は冬眠中のクマを捕獲したいのである。このクマ返り討ち事件のあと、足尾でも同じように捕獲を試みた。しかし、そこでもやっぱり成功には至らなかった。足尾のケースでは冬眠穴が岩穴でかなり奥が深かったのが敗因だった。穴の構造も捕獲の成否を分けるカギになる。土の穴だと出口がいくつあるかわからないのでちょっと怖い。奥にクマが逃げて行ったと思ったら、横からバアッと出てきて襲われるかもしれないからだ。

やはり、奥多摩のときのような、木の根の冬眠穴がベストなのだ。

韓国では冬眠穴に突入してツキノワグマを捕獲する

死ぬかと思ったし、まだまだどうすればうまくいくのかわからない。後年、韓国ではツキノワグマの冬眠穴に突入して捕獲をしていると聞いて、現場を見せてもらったことがあった。まるで機動隊のような全身防備で冬眠中のクマに向かっていく勇ましい様子をまじまじと見て、正直、ちょっとひるんでしまった。

それでも「いつか必ずやってやる!」とたぎる熱情を胸に秘め、条件の良い冬眠穴を探しながら、今もチャンスを狙っている。

そしてこの熱き思い、「まだ懲りてねえのかよ!」と叱られそうで、山﨑さんにも学生たちにも伝えられずにいるのであった。

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