東西の違いは「雑煮の餅」にも

新しい年を迎えると、多くの家庭では元日の朝に雑煮を食べる。この風習は全国各地に見られるが、雑煮の作り方は地方や家庭ごとに千差万別だ。関西は雑煮の味付けに白味噌を使う。白味噌は西京味噌とも呼ばれ、1200年の歴史を持つ京都の伝統の味だ。関東では、正月から味噌を付けるのは縁起が悪いと、すまし仕立てである。

山陰では小豆あずき汁の雑煮も見られる。小豆の赤色には邪気を払う力があり、縁起が良いのだという。全国的にはすまし仕立てが主流のようだが、かつおやいりこ、鶏ガラなどだしには地方により違いがある。

雑煮に入れる具材も多彩だ。新潟のいくら、三重のハマグリ、兵庫の焼き穴子、九州のブリなど地方ごとに特有の食材が使われている。どの地方でも雑煮の主役として欠かせないのは餅である。その餅も関東では四角い切り餅を焼いて使うのに対し、関西では丸餅を煮る。その中間の東海地方では、切り餅を使うが焼かずに煮る。

関東の切り餅は古式を省略した姿

そもそもなぜ切り餅と丸餅があるのだろうか。本来、餅は丸形である。餅の丸い形は月や鏡と関係が深い。満月は望月もちづきとも呼ばれるが、真ん丸は欠けたところがなく円満に通じる。また、昔の鏡は円盤状の金属を磨いて作られていたが、降臨した神がそこに宿ると考えられていた。年神様を招魂するために、この丸い鏡を形取ったのが鏡餅である。

関東の切り餅は、このような古式を省略したものだ。ついた餅をちぎって一つずつ丸める丸餅よりも、板状に伸ばしたのし餅を包丁で四角く一気に切るほうが手っ取り早い。関東の武家社会は古式より合理性を重視したのだろう。

ちなみに、「サトウの切り餅」のCMで知られるパック餅販売の最大手のサトウ食品には「サトウのまる餅」という商品もあり、関西のスーパーでは両方が販売されている。ただ、店頭に並ぶ地元の中小食品メーカーが製造したパック餅はすべて丸餅だそうだ。