三菱自工の益子は「スズキの暴動は特殊なことではない。戦後の日本や80年代の韓国でも大規模な争議が頻発したけど、乗り越えたからいまがあります。日本の人口は減っていくだけに、当社も会社を挙げて新興国に出ていきます。『海外生活は苦痛だ』などと言っていられる次元ではない」と話す。
世界には強敵がいる。官民一体で世界に活路を拓く韓国・現代自動車、中国やブラジルに早くから進出しモジュール生産で先行する独・フォルクスワーゲン(VW)などだ。それでも、日本企業は環境技術において韓、欧、米、中国の自動車会社より優位性を持っている。エコカーは新興国で勝つ決め手になっていく。
世界最大の自動車市場である中国は、EVとプラグインハイブリッド車(PHV)を合わせて15年までに50万、20年には累計で実に500万台普及させ、同時に年200万台の生産力を築いていくと打ち出した。「省エネルギー・新エネルギー自動車産業発展計画」として、すでにスタートを切っている。
背景には、「資源輸入国であり、石油の消費を減らさなければならない国としてのエネルギー政策がある」と土屋教授。
三菱自工の益子は、「EVおよびPHVは新エネルギー車、HVは省エネ車と中国政府が線引きした意味は大きい。新エネ車のほうが補助金が断然高いのです。これは、個人的な考えですが、HVは優れた技術ではあるけれど、給油を必要とするガソリンエンジンの究極形でしょう。外部充電する新エネ車とは違うのです。当社はこの政策に応じてEVを積極展開したい」と指摘する。
HVは値段が高く、中国ではあまり売れていない。そしてEVやPHVはまだこれからという状況。累計500万台を普及させることで、1800万台を超える世界最大の自動車市場の中身は大きく変わっていくだろう。