所属タレントが被る不利益は非常に大きい

2 所属タレントが被る不利益

世論の中には、所属するジャニーズタレントには、責任がないとして、広告出演契約は解除されるべきではないとの論調も見受けられます。また、「ビジネスと人権」の問題からも、取引停止は、最終手段とされているから、安易に広告出演契約を解除するべきではないという意見もあります。

しかし、広告主である企業にとってみれば、代表者が未成年タレントへの性加害を行った芸能事務所との取引を継続することは、未成年者への性加害を容認することと受け取られ兼ねず、企業や商品のイメージを毀損することになります。その可能性がある以上、広告出演契約の目的から考えますと、広告出演契約を解除することはやむを得ず、取引を継続することは、経営判断としても困難だと思われます。

以上から、所属するジャニーズ事務所の各タレントは、各企業の広告に出演することができなくなる不利益を被ることになります。また、今後も各企業からのオファーは減ると思われますし、テレビメディア等に対する出演も減ることが予想され、その不利益は、非常に大きいといえます。

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タレント側は契約の解除や損害賠償請求ができる

3 所属タレントが取ることができる方法

以上のように、所属タレントとしては、非常に大きな不利益を被ることになります。

しかし、今回の件は、所属するジャニーズ事務所のタレントには、責任はないと考えられます。そのため、所属するタレントとしては、ジャニーズ事務所との間のマネジメント契約を解除したり、所属するジャニーズ事務所に対して、今回の不祥事によってタレントが被った損害の賠償を請求したりすることができます。例えば、東京高等裁判所平成29年1月25日の判決では、所属するタレントが、不祥事を起こした芸能事務所側との間で、マネジメント契約の解除について争ったケースについて、タレントと所属するマネジメント事務所との間の信頼関係が破壊されているとして、マネジメント契約の解除を認めました。

他方で、今回の件では、ジャニーズ事務所に関する報道等を受け、一部の企業が、直接、タレントと広告出演契約を締結すると公表していますが、ジャニーズ事務所に残ると考えた所属タレントとしては、ジャニーズ事務所とのマネジメント契約を継続しつつ、一定の不利益を減らすことができる一つの選択肢になったかと思います。このようにジャニーズ事務所としては、ジャニーズ事務所に残ると考えた所属タレントの不利益や負担などを少しでも減らすための選択肢を積極的に用意するべきかと思います。