完全な「国産チップ」を実現していた
キリン9000sはファーウェイ傘下の半導体企業、“ハイシリコン”が開発した。ハイシリコンは2018年にIT先端分野などで米中の対立が先鋭化する以前から、日米欧などの技術を用いて製造したその当時の最先端チップの回路のコピーなどを進めてきたとみられる。
注目されるのは、その製造技術だ。一般的に7ナノメートル以下の回路を製造するには、極端紫外線(EUV)を用いた露光装置と呼ばれる製造装置が不可欠とされてきた。その装置を供給できるのはオランダのASMLのみだ。テックインサイツは、SMICはEUVを用いないチップの製造技術を開発し、中国の半導体産業は先端に近いチップの完全な国産化を実現したと指摘した。
2019年以降、米国政府は自国の半導体製造技術、知的財産が中国に伝わらないよう、規制や制裁を強化した。一時、ファーウェイ、SMICなど中国半導体産業の製造技術向上は鈍化した。しかし、ファーウェイやSMICはあらゆる手段を用いて確保した最先端チップを分解したり、新しい製造技術の研究開発を加速したりしたようだ。それによって5G通信に対応した先端チップを製造し、Mate60Proを投入した。
アリババ、バイドゥも生成AIを強化
共産党政権は、中華スマホの利用を政府関係者から進め、国産チップの精度向上につなげようとしている。それによって、中央演算処理装置(CPU)や画像処理半導体(GPU)の開発を加速し、高性能の人工知能の活用範囲拡大を狙っているようだ。なお、中国は米オープンAIが開発した“チャットGPT”の利用を禁止している。
人工知能の分野でも、ファーウェイは開発能力を強化した。天津港の港湾施設運営のシステムを支えるAIをファーウェイは開発し、業務の無人化や省人化を実現した。また、9月1日、ファーウェイは映像や音声を加工する技術(ディープフェイク)向けの生成AIの承認を中国国家インターネット情報弁公室(CAC)に申請した。アリババも同様の申請を行った。百度(バイドゥ)は“文心一言(アーニー・ボット)”と呼ばれるAIの開発を強化している。