スマホ、パソコン、スマートウォッチも
中国の習近平政権は、中央政府の職員に米アップルの“iPhone”など海外企業のデバイスの業務での使用を禁止した。それに伴い、地方政府や国営・国有・政府系企業なども、海外企業のスマホ、パソコン、スマートウォッチなどの使用を禁止するという。そうした措置は、あたかも中国政府が海外のIT企業との対立を鮮明化しているようだ。
中国政府の意図は、先端分野で海外勢に負けないような実力を作り上げたいのだろう。今後、世界の産業の中心は“チャットGPT”などの先端分野になるとみられる。当該分野で、中国独自の技術を確立することが目標だろう。
その実現に向け、8月、通信機器大手“華為技術(ファーウェイ)”は、回路線幅7ナノメートルの“キリン”チップを搭載する最新スマホを発表した。メモリ部分などを除き、かなりの部品を半導体受託製造大手、“中芯国際集成電路製造(SMIC)”、などの中国企業が提供したようだ。
習近平政権の高い意欲を感じる
今後、中国政府は、米国のエヌビディアや英アームなどに匹敵する、AI発展に欠かせない企業の育成を急ぐだろう。それは、不動産バブル崩壊で厳しい状況にある中国経済の回復のためにも不可欠だ。AI利用に向けたIT先端分野の企業育成が、不動産市況の悪化を上回るスピードで進むか否かは、今後の中国、ならびに世界経済の展開にかなりの影響をもたらすことが想定される。
今回の共産党政権の狙いは、自国のIT先端機器の利用を増やすことによって、最先端のロジック半導体などの実力を高めることだろう。米国の対中半導体、製造装置などの輸出規制の強化を跳ね返し、自力で世界トップレベルの製造技術を実現しようとする習政権の意欲は高い。
それは、ファーウェイが発表した最新のスマホ“Mate60Pro”のスペックから確認できる。
詳細は、カナダのIT調査会社、“テックインサイツ(TechInsights)”が報告した。それによると、SMICは回路線幅7ナノメートル第2世代の製造プロセスを用いて、Mate60Proに搭載された“キリン9000s”チップを生産した。なお、米インテルは2016年に回路線幅10ナノメートルの製造ラインを立ち上げることができず、その後は台湾積体電路製造(TSMC)の技術を頼り始めた。