超音速の風のなか、棒にしがみつきながら降りていく

ついに大気圏に突入するとき、あなたは熱帯地方の端、つまり回帰線に近いあたりに降りてくることになるだろう(月の対地速度が極小の時をねらったので、滑り棒は回帰線付近に来ているはずだから)。

ランドール・マンロー『もっとホワット・イフ? 地球の1日が1秒になったらどうなるか』(早川書房)

地球の自転と同じ方向に吹いている上層大気の気流である熱帯ジェット気流を避けるようにしよう。滑り棒がたまたまそのジェット気流に入ってしまったなら、風速がさらに秒速50から100メートル速くなるだろう。

あなたは、どこに降り立つかにはかかわらず、超音速の風を相手に苦闘しなければならないので、体を保護するものをたくさん身に付けておこう。くれぐれも、棒から絶対に離れないようにしっかりしがみつくように。

なにしろ、風とさまざまな衝撃波が激しく打ち付け、あなたの体をあらゆる方向に揺さぶるだろうから。「落下そのもので死ぬのではない。最後の急停止で死ぬのだ」とよく言われるが、この場合はおそらくその両方だろう。

どこかの時点で、地面に降りるために、あなたは棒から手を離さなければならないだろう。当然ながら、マッハ1で動いているときに、直接地面に飛び降りないほうがいい。おそらく、航空会社の旅客機が飛んでいるあたりの高度に近づくまで待ったほうがいい。

そこでは空気がまだ薄いので、空気抵抗はそれほどでもないだろうから。そうして初めて、棒から手を離すのだ。その後、あなたは気流で運ばれながら、地球に向かって落下するが、そこでパラシュートを開けばいい。