共有体験の効果

体験にお金を使うことのもう一つのメリットは、人は一人で使うために品物を入手する傾向が強いのに対して、体験は他者と共有する傾向がある、ということです。例えば、旅行や観劇は一人よりも友人と行くことが多いでしょうし、新しい財布や時計、ノートパソコンは共有するためではなく、自分が使うために購入することのほうが多いのではないでしょうか。大切な人たちと経験を共有しようとする、このような傾向は幸福感に大きく影響する可能性があります。例えば、著名な徒歩旅行者で放浪者であるクリス・マッキャンドレスは「幸福は分かちあえたものだけが、ほんものである」と記しています23※。

ある研究は、体験にお金を使う場合と品物にお金を使う場合、そして一人だけの目的のためにお金を使う場合と社会的な目的のためにお金を使う場合で、幸福感に対する相対的なメリットを比較することで、この疑問を直接検証しました24※。この研究は、お金を使うベストな方法について、一体、どのようなことを教えてくれたのでしょう?

第一に、自分で使う予定の財布や時計を買う場合よりも、家族みんなで楽しめる新しい大型テレビを買う場合の方が、より大きな幸福感が得られることがわかりました。この研究結果は、品物にお金を使う場合と体験にお金を使う場合のどちらにも当てはまります。つまり、友人とコンサートに行く、夫婦で旅行するなどの社会的な共有体験にお金を使った人は、一人でスポーツイベントに行く、一人で旅行するなどの単独での体験にお金を使った人と比べて、満足感が高かったのです。

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しかし、幸福感を最もよく予測したのは、夫婦で旅行を計画したり、家族全員でブロードウェイを観劇するなどの社会的な共有体験にお金を使うことでした。実際、社会的な共有体験は、単独での体験や品物にお金を使った場合と比べて、幸福感に大きな影響を与えていました。これらの結果は、体験にお金を使うこと、特にその体験を大切な人たちと共有することが幸せに大きな影響を与えることを示唆しています。