セレクションにたどり着ける卵子は若い人で10個程度
セレクションの段階までたどり着ける卵子は、そうたくさんあるわけではありません。若い人なら平均10個程度、高齢妊娠の人なら、かなり大きなばらつきはありますが数個くらいが平均でしょうか。
1回の出産で何匹も子どもが生まれる他の哺乳類であれば、これらの生き残ってきた卵子たちはそのまま育ってもよいのです。じつは、一度に何匹も子どもが生まれる哺乳類は、子宮が左右にわかれてふたつあり、複数の胎児が育ちやすい形になっています。しかしヒトには、双子や三つ子以上の妊娠は避けようとする仕組みがあり、進化の過程で左右の子宮がくっついてひとつになりました。
子どもが1人(1匹)だけ生まれることを単胎と言いますが、ヒトは他の動物とは異なる身体に進化してきたため、基本的に子どもは単胎で産むという戦略をとったと考えられます。おそらく二足歩行と大脳の発達が、ヒトの出産を負担の大きいものにしたからでしょう。身体に比して、ヒトの胎児は頭部が大変大きくなっていますし、一方で母親の子宮や骨盤は小さくなっています。
排卵しない卵胞は自分を壊してしぼんでいく
セレクションの時点から、卵胞を育てるFSH(卵胞刺激ホルモン)の量は減っていき、それまでの8割程度になります。でも、いちばん大きかった卵胞だけはFSHに対する感受性が高まり、ますます大きくなっていくことができると考えられています。最終段階である排卵寸前の卵胞はグラーフ卵胞と呼ばれますが、卵胞腔の部分にたくさんの卵胞液をたくわえてパンパンにふくれており、最大時の大きさは20mm前後にもなります。図表6は、卵胞の中の様子を示した図です。
その一方で、排卵しない他の卵胞たちは自分を壊してしまう現象、アポトーシスを起こして、しぼんでいってしまいます。これは、閉鎖卵胞と呼ばれます。