動脈硬化が進行する「全身の老化現象」

動脈硬化が進むことで、次のような全身の老化につながります。

・血行が悪くなり、肌や髪がボロボロになる
・代謝が悪くなって太りやすくなる
・肩凝り、腰痛、むくみ、冷えなどの症状が現れる
・疲れやすくなり、姿勢が悪くなる
・病気がちになる
・脳に栄養や酸素が十分に送られず、脳の機能が低下する

話はこれだけでは終わりません。

厚生労働省の「人口動態統計」によると、2021年の日本人の死因の第1位は「悪性新生物(がん)」、第2位は「心疾患(高血圧症を除く)」ですが、心疾患による死亡率は年々増加しています。

とくに患者数が増加しているのが「心不全」です。心不全は医学的には病名ではなく、十分な血液を全身に送れなくなっている状態を指しています。

しかし日本循環器学会および日本心不全学会は、2017年に「心不全の定義」として、「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」と発表しました。心臓が悪いことを総合的に表現する言葉として、あえて「病気」と表現したのです。

「心不全パンデミック」のリスク

「がん患者100万人時代」という言葉を聞いたことがある方もいると思います。しかし日本における心不全の患者数は、2020年時点ですでに約120万人と推定されており、がん患者数を超えています。

近年、医療関係者の間では、心不全患者数の急増を、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症のパンデミックになぞらえて「心不全パンデミック」と呼び、不安視されているくらいなのです。

心不全が起こる主な要因には、高血圧や心筋梗塞などがあります。粥状動脈硬化が冠動脈(心臓に血液を送る血管)に発生すると、心筋に十分な血液量を送れなくなり、心筋が酸欠状態におちいって、命に危険が及ぶことになります。

心不全は死亡率と再入院率が高く、がんの「5年生存率」が約70%であるのに対して、心不全は約50%と、がんよりも低いのです。