ソニーの社長の条件
ディズニーのダイナミックな世代継承に比べると、ソニー側は基本的に社内昇格を中心としている。第5代の大賀典雄(1982~95)までは「創業者時代」と言われ、井深・盛田から直接薫陶を受けた第一世代が仕切っていた。
激震が走ったのは6代目出井伸之で50周年の節目に取締役で若手だったところを“14人抜き”でトップに据えたのは、まさに“創業者”のひとりとしてソニー遺伝子を継ぐ大賀しかできないジャッジだっただろう。
7代目ハワード・ストリンガー時代はソニーの電機部門の調子も悪く、混迷を極めていたが、第8代平井一夫、第9代吉田憲一郎、第10代十時裕樹と比較的安定の継承スタイルが踏襲されたこの10年間でソニーのポジショニングはみるみる盤石化した。
ストリンガー以外はすべてソニーに入社し、グループ外を渡り歩いたことのない「プロパー経営者」である。
こうしてみると、ディズニーの経営とソニーの経営は、そのまま米国の経営と日本の経営の差でもある。だがどうして、ソニーのプロパー経営者純血主義が見劣りするか、というとそういうことはない。少なくともチャペックのような早期の交代劇はなく、各経営者が5~10年ほどのタイムスパンでコンスタントに継承し続けているのがソニー・スタイルだ。
プロパーがいいのか外部がいいのか
では経営成績としての2社を比較してみると、実際にはわれわれが想像するようなものとは大きく違うことがわかる。
当然ながらCEOの突然の解任、といった事態も起きようもない。一概にどちらが正解でどちらが誤りかといったことが言えないのは組織経営では当然ある話だが、コンテンツ企業となるとさらにその複雑性は増す。
ただ一つ言えることは、ウォルト・ディズニーの意思を築きエンタメ産業の一丁目一番地にあるようなディズニーですらその経営基盤は盤石とは言いがたく、1人のリーダーによって黒にも白にも変わりえること。
逆にリーダー依存性が比較的弱いソニーグループから、特に「ソニー」という名前すら冠さなかったアニプレックスから「鬼滅の刃」のような巨大キャラクター版権が生まれ、そこにYOASOBIや米津玄師といったアーティストがコラボし、世界チャートでトップを飾るようなコンテンツ事例が現れているのだ。