中身をもっと濃くして、成果を公表してほしい
ただし、視察内容はもっと中身(スケジュールではなく)を濃くして、成果も公表してほしい。自民党女性局も、今回の視察成果を報告書にまとめて公表し、視察が有意義だったことをアピールして欲しい。
シリコンバレーでは、日本の企業人が続々と来て、商談につながりそうもない話に時間をとらせると大ブーイングが起きている。フランスの役所でも企業でも、官民を問わず日本から不勉強な人が視察に来て、同じような案件で時間をとらされるのに辟易していた。
私の経験から、一例を紹介しよう。私はフランス国立行政学院への留学時代から公共工事の一般競争入札制度の実態を調べて、単行本や雑誌に執筆し続けていた。指名競争入札を糾弾するためである。そして、10年後に在勤でパリに戻ったころ、ようやく世間で関心が高まっていた。
そこで、日本から国会議員はじめ官民続々とフランスの関係部署に視察に訪れた。既存の資料などほとんど読んでいない彼らは、フランス側に初歩的な所から説明を求めるが、「建前と違ってフランスにも談合が多い」といった期待した回答が得られないので、「きっと裏があるに違いない」と疑いつつ帰国していった。彼らは公開レポートも書かないので、その後に来る人もまったく同じことを繰り返していた。
手本とすべきは明治時代の岩倉使節団
明治時代の岩倉使節団のように、役所や業界団体が調査団を組織して、事務局が既存文献の調査をし、事前の勉強会もし、その上で、外国へ行ってきちんと質問もして、帰国したら報告書をまとめ、ネットなどで発信すべきだ。
私は、日本人は「キャッチアップの時代は終わった」「海外にモデルはない」などと言い訳をして不勉強になったと思う。私はかねて「ほとんどの分野にモデルはあり続ける」と主張し、バブル崩壊後は「新しいキャッチアップの時代が始まった」と言い続けたが、あまり理解されなかった。
また、直接の調査対象だけでなく、観光も少しは取り入れて海外の文化や人々の生活に触れることも否定すべきでない。中国で万里の長城を見ないのも、パリでショッピングしないのも馬鹿げている。