過密すぎるスケジュールは現地にとって迷惑
ホテルは地下鉄終点(パリ市外の郊外都市)の庶民的な地域にあり、安い団体旅行が使うビジネスホテルだ。夕食は、このホテルの食堂、観光船内、大使公邸の隣の会員制クラブ(「第一次世界大戦連合国倶楽部」。建物は豪華だが、食事は東京でいえば学士会館とか如水会館の印象で値段も安い)。昼食はシャンゼリゼ通りのビストロなど、観光バスの市内見学ツアーで使う中クラスだ。
一部メンバーは自由時間にルーブル美術館へ行ったそうだが、議員たちの純粋なパリ観光は最初の日の午後5時以降だけとみられ、このときにエッフェル塔の前で写真を撮った。あとは昼食前後の自由時間くらいだ。
いわゆる視察の場合、これ以上に密なスケジュールは、現地にとって迷惑だ。「観光地に行く余裕があることが不思議」などと批判している元衆院議員の豊田真由子氏のように、通訳もいらない国際派の国会議員が、自分でアポもとって、車だけ出してくれと言うなら別だが。
また、松川議員が子どもを視察に連れて行き、大使館に一時子どもを預かってもらったことも批判されている。
だが、欧米では出張に自己負担で家族を連れていくことは珍しくない。また、オフィスが個室ばかりなので、ベビーシッターの都合がつかなかったなど例外的な状況であれば、職員がオフィスに子どもを連れてくることにも寛容だ。私も、休暇などで来訪した知り合いから頼まれて、短時間、手のかからない年齢のこどもが疲れて休みたいというので私のオフィスで預かったことがある。
長時間ならベビーシッターかアルバイトの学生でも雇うお手伝いをするし、親しい人なら自宅で預かる。元外交官の松川議員が、元同僚に相談したら、短時間なら大使館で宿題でもさせといたらとなったのだろうが、今は国会議員なのだから慎重にすべきだったのは確かだ。
本来、視野を広げる視察は有意義なもの
懸念されるのは、今回の炎上を受けて視察を控える空気が醸成されることだ。
本来、会議出席や交渉以外の「視察」で地方や海外での視野を広げることは、国会議員に限らず官民の誰にとっても仕事をする上で有意義だ。
村山富市元首相がナポリでの先進国首脳会議に出席したとき、3度目の海外旅行だった。国会議員の海外旅行は贅沢と批判されそうなので、国会などからの派遣で辛うじて2度だけ海外を経験していたのだが、この経験のお陰で首相を引き受けられた。
こうしたことができなくなると、ますます地方も海外も知らない政治家が増えてしまう。