場所も活動内容も「千差万別」
毎年、学童保育の実態調査を行っている全国学童保育連絡協議会の資料によると、2022年5月1日時点で学童保育に通っている子どもの数は134万8122人。14年前の1998年は約33万3100人、10年前の2012年は約84万7000人で、年々増加している。学童保育の施設数は98年の9627が2012年には倍以上の2万846に、2022年には2万4414に増えた。なお、2015年度からは、入所児童「おおむね40人以下」で1つの「支援の単位」として数えるようになり、その単位でみると2015年に2万5541 だったものが、2022年には3万5337になっている。
これらの学童保育の形態や内容上の特徴を、石原教授は「千差万別」と表現する。
「開設場所は小学校構内、民家や児童館などさまざまです。学校の構内でも、独自の建物がある場合もあれば、教室を改装しただけのところもあります。国の基準では面積を『児童一人当たり、おおむね1.65平方メートル以上』と定めていますが、市町村では、国の基準以下の面積水準での条例制定も可能になってしまっています。空間ごとの最大人数の規定もないので、大部屋で大勢の子が集まって過ごす場合もあるばかりか、狭い空間に大勢の子どもたちが「すし詰め」になっている場合もあるのです」
多くの施設では子どもたちが自分の足で通い、同じ場所を複数の学年の児童が利用する。小学生は学年によって下校時間が変わることから、放課後には低学年が先に到着し、高学年はそのあとから、五月雨式にやってくる。
施設での過ごし方もまた、いろいろだ。「宿題を終わらせて、おやつを食べて遊ぶ」という典型的な平日の過ごし方はあるとしても、設置された場所によって、屋外での遊びが大きく異なってくる。近所の公園などに遊びに出かけるところもあれば、それを許さないところもある。職員が、子どもをただ見守っているだけのところもあれば、子どもたちと遊ぶことも含めて関わっているところもある。おやつもスナック菓子を配るだけのところもあれば、できたてのおやつを提供するところもあるのだ。
公営から民間企業まで運営主体はさまざま
学童保育の多様性を象徴するのが、運営主体のばらつきだ。自治体による公営、保護者運営、社会福祉協議会やNPO法人や学校法人、民間企業と、財源規模も運営スタイルも異なる事業者が混在している。
「児童福祉法が定める放課後児童健全育成事業を開設・運営するには、市町村への届け出が必要です。が、同法にのっとって行なわないのであれば、届け出もしないで『学童保育』を名乗って事業を開設・運営することができますし、その例は増えています。この表の運営主体も、届け出をしている事業のみが対象で、実際の全体像を把握することは至難です」
昨今、ニーズの上昇とともに増えているのが、このいわば無届けの「民間学童」。たとえば、英語塾チェーンが各地で「英語を学ぶ学童保育」をうたって開設しているケースや、スポーツクラブを運営している会社が「習い事ができる学童保育」等とうたっているところもある。都市部では駅近くの施設で夜遅くまで子どもを預かるサービスが、夕食や入浴まで提供して長時間労働の親たちをターゲットとして展開されている場合もあるという。小学校構内で放課後の数時間、大人数の子どもたちが過ごすタイプの公営学童や、保護者運営の学童保育との違いは顕著だ。