マップ上でグルーピングする

このマップでは、多種多様な医療機器の全体像を把握するために、横軸に「製品単価」、縦軸に技術レベルをとっています。技術レベルは1つの指標で数値化するのが難しいので、「性能差別化」と表現し、「高」「中」「低」の3つに大きく分けることにしました。語弊があるかもしれませんが、「高」は先進国で必要とされる医療機器、「中」は新興国でも必要とされる医療機器、「低」はそれほど重要ではない医療機器というイメージです。

また、日本製品のグローバル競争力を「勝てている、勝てそう」「負けていない」「負けている」の3つに分けて、円の色の濃度で表現しています。円の大きさは、国内市場規模です。

そして、円の縁取りで「生体リスク」を表わしています。例えば、身体に埋め込む人工関節は生体リスクが高く、簡単に取り外しができるコンタクトレンズは相対的に生体リスクが低い、という具合です。

つまり、様々な医療機器について、「製品単価」「性能差別化」「グローバル競争力」「国内市場規模」「生体リスク」の5つの情報を表現しているのが、このマップです。

このように、マップは縦軸と横軸の2軸で構成されていますが、円の大きさ、色やその濃度、縁取りの線などで、表現できる情報は5~7種類詰め込めます。

グループごとの課題を抽出する

このマップを見ると、確かに、ほとんどの医療機器で日本企業は海外企業に負けています。

しかし、マップの真ん中あたりには、勝っている医療機器、負けていない医療機器があることがわかります。オリンパスが強い「医用内視鏡」や、シスメックスが強い「生体機能制御装置」などのグループ④です。製品単価が中程度で、技術レベルも中程度のものについては、日本企業のグローバル競争力は高いのです。

次に、日本企業が負けている医療機器の分布を見ると、技術レベルが高いグループ①と、技術レベルは中程度で製品単価が高いグループ②、技術レベルは高くなくて製品単価も安いグループ③に分けられます。

グループ①については、テルモの「チューブ・カテーテル」が何とか勝負になっているぐらいで、それ以外はほぼ全敗です。残念ながら、日本企業の製品開発力は高くないということが見えてきます。これが、日本企業が負けている理由の1つではないかと推測できます。

次にグループ②を見てみましょう。MRIやCTといった高額医療機器の領域です。

この領域で勝っているのは、フィリップスなどの海外企業です。その勝因を深掘りしてわかったのは、医療機器単体を販売しているのではなく、病院システム全体の最適化をビジネスとして行っているということでした。「機器そのものの性能」ではなく、「システム全体でのデータ連携や使いやすさ」を武器に戦うことで勝っているのです。

写真=iStock.com/simonkr
※写真はイメージです

一方、日本企業は機器を単体で販売しています。これがグループ②における敗因のようです。

グループ③は、製品単価が安い医療機器です。「注射器具」や「歯科用金属」のように日本企業が負けていない医療機器もいくつかありますが、圧倒的に強いのが、ジョンソン・エンド・ジョンソンです。安価な医療機器のほとんど全部を自社内にそろえており、それらをまとめて病院に購入してもらう営業力やチャネルの力が、その勝因です。

日本企業は医療機器ごとに扱っている企業がバラバラです。買う側の医療機関にしてみれば、医療機器ごとに別の会社と契約しなくてはなりません。それよりも、1社からまとめて購入できるほうが利便性が高く、時間もお金も節約できます。

グループ③の敗因は、海外企業の品ぞろえと営業力に太刀打ちできていないことだと言えます。