尿もれ、脱腸、子宮脱につながることも

さらに内転筋は、内臓を下支えする骨盤底筋群とも関連して骨盤を支えたり、姿勢を支える腹筋の活動も高めたりすることがわかっています。

内転筋が弱ってしまうと、骨盤底筋群や腹筋にも悪影響があり、加齢に伴って増える尿もれ、脱腸、子宮脱などとも関係します。つまり内転筋は、中高年以降の筋トレの大事なポイントです。

しかし、この内転筋は、鍛えにくいうえに、意識的に使わないと弱りやすい筋肉です。拙著『100年ひざ』(サンマーク出版)で詳しく解説している内転筋トレーニングを日常生活に入れてみてください。寝転んでできる方法ですから、隙間時間にお笑い番組でも見ながら、リラックスしてやってみてください。

意識的に内転筋を使って歩く。それは内転筋を鍛え、脱ニワトリ歩きをかなえ、さまざまなトラブル予防に通じる歩き方です。しばらくは意識的に練習する必要があり、いくらかぎくしゃくするかと思いますが、続けていればからだが覚えて、自然に歩けるようになっていきます。

歩くときは、親指側に体重を乗せることを意識する

内ももの筋肉(内転筋)を使い、ひざを内側に入れることで、大腿骨と脛骨の間に隙間をつくって、親指側で体重を移動させて歩く歩き方が「内もも歩き」です。この歩き方は、変形性膝関節症の患者さんを診察していて、ヒントをもらって考えました。

患者さんのレントゲン撮影で、「ストレス撮影」という方式で撮ると、内側の関節が開き、隙間が出ます。「ストレス撮影」とは、ひざをぐーっと押して撮るもの。外側からひざを押したストレス撮影の写真だけを見たら、変形性膝関節症ではない人、つまり軟骨の状態が正常であるかのようです。

実際には押している力を抜くと元に戻り、内側の骨がまたぶつかってしまうのですが、外側から押せば隙間ができる! ならば、内ももを意識して使って、ストレス撮影のときのように隙間をつくって歩けば、軟骨の負担を減らせるはず! その発見で「内もも歩き」を考案しました。

この歩き方で大腿骨と脛骨がぶつかって起こる微小骨折を防ぐことができれば、激痛はなくなります。

出典=『痛みが消えてずっと歩ける 100年ひざ』(サンマーク出版)