夫への罪悪感はまったくなかった

不倫関係がスタートしたのはそれから3年後だったという。「その日も夫の言葉に深く傷ついた私は、子供を連れて家を出て実家に帰ったんです。その頃には、彼とは定期的に連絡を取り合う仲でした。実家に帰った翌日の昼間、公園で彼と再会した瞬間、涙が止まらなくなってしまった私を『時間はかかるかもしれないけれど、俺がR子さんを守るから』と優しく抱きしめてくれたんです」。

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R子さんいわく「夫への罪悪感はまったくありませんでした。それどころか不倫相手の彼の存在があったからこそ、その後の夫との生活もずっと耐えることができたように思います」。

その後、R子さんの夫は無事に定年を迎え、子供たちもそれぞれ家庭を持ったところでR子さんの気持ちは熟年離婚に向けて固まったとのこと。「いまさら熟年離婚なんて……と思う人もいるかもしれませんが、私は残りの人生を自分の幸せのために生きることに決めたんです。もう家族への責任も十分果たしたと思っています」。

冷え切った夫婦関係にワンオペでの義父の介護

【CASE2】介護生活から逃避する形で不倫→熟年離婚へ

「まさか自分が熟年離婚をするなんて思いもしなかったけれど、今となってはその選択しかあり得ないと考えるようになりました」と話すのはE美さん(60歳)。2歳年上の夫は定年まで勤務していた会社で、再雇用制度を利用して働いていて、2人の間には子供がひとりいる。

E美さんが熟年離婚を考えはじめたのは10年以上前のことだと振り返る。「息子が地方の大学に進学して、夫と2人だけの暮らしになってみると何も会話がないことに気がついたんです。お互いへの関心がなくなっているだけでなく、冷え切った夫婦関係を改善しようとするモチベーションもない。そんなタイミングではじまったのが夫の義父の介護でした」。

E美さんいわく「はじめての経験だったこともあり、義父の介護は思ったより大変でした。本来であれば妻である私を支えてくれるはずの夫にはまったく期待ができず、ほぼワンオペで頑張ってきたんです。先が見えず、救いのない生活のなかで唯一見いだした希望の光が、週一で通いはじめた書道教室でした」。