高インフレで生産量が減っても売上高が増える産業が多い中で、ドイツのリーディングインダストリーであったはずの化学工業の不振は際立っている。このままでは業界の再編は回避できず、多くの雇用が失われる事態が想定される。VCIはドイツ政府に対して支援の必要性を訴えているが、その声がショルツ政権に届くだろうか。

そのドイツでは今、極右政党であるAfD(ドイツのための選択肢)の支持率が急速に高まっている(図表3)。

AfDの支持率は、すでに最大野党であり中道右派のCDU/CSU(同盟)に次ぐ2位であり、政権与党でありショルツ首相を擁するSPD(社会民主党)や、パートナー政党であるB90/Gr(同盟90/緑の党)の支持率を上回っている。

「脱炭素・脱原発」を急いだツケは大きい

過激な主張で知られるAfDだが、一方で同党が、主流の政治に対して不満を持つドイツの有権者の受け皿になっていることも確かである。有権者の主な不安とは、記録的なピッチで増加する移民・難民の問題に加えて、やはり脱炭素・脱原発・脱ロシアの「三兎」を追う戦略と裏腹の関係にあるエネルギー高・物価高の問題である。

もともとAfDは、寛容な移民・難民問題に対して批判的であり、またメルケル前首相以来のドイツ主流政治の伝統と化した再エネ一辺倒のエネルギー政策に関しても否定的なスタンスに立っていた。そのため、ショルツ政権が推進する脱炭素・脱原発・脱ロシアの「三兎」を追う戦略に対して不満を持つ有権者の民意を引き寄せる力を持つ。

政権に対する逆風は強まるばかりであり、2025年10月までに予定されている総選挙での敗北も視野に入るショルツ首相だが、依然として手をこまねいているように見受けられる。このままでは、化学工業のみならず、労使全般の支持離れが進むだけだ。副作用に配慮せず急進的な戦略を推し進めてきたツケは大きいといわざるをえない。

(寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)

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