「日本産フルーツケーキ」に長い行列が
金曜日の夕方、ヒリオンモールのシャトレーゼは家に持ち帰るケーキを買う人々で、長い行列ができていた。
「夕方になると、いつもこんな具合です」
そう教えてくれたのは松岡正将さん。シンガポールの担当で、進出の直後から同社で働いている。シンガポール在住だから、同国の事情にも詳しい。
「うちの店舗ではどこでも季節の果物を使ったケーキがいちばん人気です。いちご、白桃、さくらんぼ、ぶどう、柿といったもので、材料の果物はいずれも日本から空輸している新鮮な国産品です。ケーキそのものは山梨の工場で作ったものを冷凍して、船便で運んできます。
店舗では解凍したケーキの上に従業員がカットした果物を載せて販売しています。アジア、中東へ運んでいるケーキはいずれも同じように冷凍したケーキと空輸した果物ですが、これは冷凍技術とコールドチェーンのおかげといえます」
シャトレーゼがシンガポールで売っているケーキの値段は日本で買うのとそれほど変わらない。果物を空輸してもそれくらいの値段でやっていけるのは、同社が山梨県内の契約農家から年間を通して相当な量を買い付けているからだ。
他社が同じようなビジネスをやろうとして日本から冷凍のケーキを運ぶことはできる。しかし、新鮮な果物を空輸できる会社はほぼないだろう。契約農家との長年の絆がなければ成り立たないのである。
ケーキ屋というより果物店のよう
また、ヒリオンモール店には日本の店舗と同じように和菓子、アイスクリーム、せんべい、自家製ワインなども並んでいる。和菓子、アイスクリームも人気があるが、多少の違いもある。例えば、日本ではアイスといえば「チョコバッキー」が売れる。しかし、シンガポールでは「しぼりたて牛乳モナカ」が人気商品で、チョコバッキーよりも売れる。チョコよりも乳製品のほうが好まれるのだろうか。
シンガポールは小さな国で農産物はすべて輸入に頼っている。他の国であれば自国の農産物を保護するために輸入を制限したり、多額の関税をかけたりする。しかし、シンガポールで自給しているのは卵くらいのもので、それ以外はすべて輸入している。そのため、農産物に対しては関税がかからない。他のアジアの国よりもさまざまな種類の農産物を使った商品を並べることができる。
わたしはシャトレーゼ以外の欧米資本やローカルのケーキショップも見に行った。何といっても違うのは店頭の彩りだ。シャトレーゼのケーキには季節の果物、通年販売の果物が載っているものが多い。いちごの赤、白桃の白、ピンクなどが店頭を鮮やかに彩っている。果物店のような外観だ。