子育て支援先進国に比べると遠く及ばない
【藤波】単純に6兆円を追加で子育て支援にあてると、現在3兆円程度の国の子育て支援予算と合わせて9兆円になるから、現行の3倍にする感じになるね。かなり思い切ったつもりだけど、いわゆる子育て支援先進国に比べると、これでもたいしたことはないんだよね。今、先進国の家族向け社会支出のグラフを画面共有するね。
子育て支援向けの支出は、国だけではなく、地方自治体や事業者負担もあり、OECDの基準に則って合算しGDP対比を算出すると、2017年は1.79%だった。先ほどの国の追加財源6兆円をここに単純に足し合わせるとGDP対比は2.88%となり、EUの平均値を大幅に上回り、現在のフィンランドに並ぶ(図表1)。
ただ、2.88%を算出する際の分母に当たるGDPはゼロ成長、すなわち現時点の金額としており、現実的にそうした状況であれば、財源の確保は極めて難しいだろうね。もし年率1%で経済成長すると財源は確保しやすくなる半面、分母であるGDPも大きくなるわけで、日本の社会支出はEU平均程度まで下がってしまう。強気に6兆円などといってもその程度の話であり、フランスなどには遠く及ばない。
多子世帯優遇は不要
【桑田】財源確保は相当厳しそうな感じだけど、当然、第3子、第4子に多く給付するような傾斜をつけるわけでしょ。
【藤波】そういうことをいっている識者が多いし、すでにそうした施策は、国内外のいたるところにある。吉野さんがさっきいっていた政府のたたき台でもその方針が明記されていたね。でも、結論からいえば、私は全員一律でいいんじゃないかと思っている。確かに子だくさんの家庭は負担が大きいというのはわかる。住宅も広いものが必要となるわけだからね。
だけど、露骨な多子世帯支援は、過度に出産奨励的なイメージにつながってしまわないだろうか。生めよ増やせよ的な感じ。前時代的であまり好きじゃないんだよね。
あと、多子優遇を推奨する人が多いのは、ある種の誤解に基づいているような気がするんだよ。
それは、多子世帯が減っているから少子化になっているという誤解。図表2をみてほしい。これは、出生順位別の出生数の構成比を時系列で示したもの。どう、思っていたのと違わない?